国交省人事を現役職員から入手 介入問題のOB、検証委がメール確認

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畑宗太郎 柴田秀並 編集委員・伊藤嘉孝

 国土交通省OBによる人事介入問題で、舞台となった東証プライム上場の「空港施設」(東京都)の外部有識者らによる検証委員会(委員長・八田進二青山学院大名誉教授)が28日、記者会見を開いた。国交省OBが、国交省側の意向だとして副社長ポストを求めて就任していたことについて、国家公務員法天下り規制の趣旨に反する行為で、企業価値が毀損(きそん)されたと指摘した。

 同社では2021年5月、元国交省東京航空局長で当時取締役だった山口勝弘氏(64)が、役員人事を話し合う会議で自ら副社長ポストを求め、就任していた。会議では、国交省の権限に言及し「バックにいる人たちがどう思っているかということ」「しかるべき所に聞かざるを得ない」などと発言していた。

 また22年12月、元国交事務次官で東京地下鉄(東京メトロ)会長の本田勝氏(70)が空港施設社を訪れ、首脳に対し、山口氏を次の人事で社長にするよう求めていた。山口氏は問題発覚後の4月3日に辞任した。

 検証委は4月10日に設置され、当時の経緯について役員ら14人と関係会社を対象に面談や書面で聞き取りを実施した。26日付でまとめた報告書では、山口氏の発言について、自身が副社長に就けば、便宜を図るよう国交省側に要求できると「強く示唆するもの」だと指摘。OBによる現役職員への口利きを禁じる国家公務員法の規制の趣旨に反する行為で「社会規範にもとる」とし、企業価値が毀損(きそん)されたとした。会議に参加した取締役の中には、国交省の現職の意向が働いていると感じ、恐怖を覚えた人が複数いたという。

 検証委は、空港施設社側に対しても「役員指名ガバナンス(企業統治)が機能不全に陥っていた」とし、役員人事について透明性を確保するよう求めた。

 また検証委は、山口氏に会社から貸与されていたパソコンやスマートフォンを、データ復元作業をしたうえで解析。副社長に就任した21年6月以降、国交省の現役職員から職員の入省年次やポストが整理された情報を1回、人事情報を2回、メールで受け取っていたことを確認した。人事情報の受信は、人事発令日の1~4日前だった。検証委は「一般に確認されていないと思われる情報」としている。こうしたデータが消去されていたかどうかは不明という。

 国家公務員法は、現役職員が企業側に職員の再就職のために情報を提供することを禁じている。今回明らかになったやりとりが再就職を目的としたものだったかは確認されていない。これまで国交省は一連の問題について「現役職員による再就職のあっせんは確認できていない」としてきた。国交省は今回の経歴や人事情報などの提供について、取材に「直ちにお答えすることは困難」としている。(畑宗太郎、柴田秀並、編集委員・伊藤嘉孝)

空港施設社が設置した検証委員会の報告書の骨子

・国交省OBの山口勝弘氏の副…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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