日本最大の円墳・富雄丸山古墳(奈良市、4世紀後半、全長109メートル)で出土した国内最大とされる鉄剣が27日、奈良県橿原市の県立橿原考古学研究所(橿考研)で報道陣に初めて公開された。橿考研などの調査で、鉄剣は木製の鞘(さや)に収められていたことも新たにわかった。
鉄剣は、刃が左右にうねるように屈曲した「蛇行剣」(全長約2・37メートル、幅約6センチ)。奈良市教委の昨年度の調査で、古墳の造り出し(突出部)から全長5メートル前後の木棺を収めた埋葬施設が新たに見つかり、その木棺を覆う粘土の中から、過去に類例のない盾形銅鏡とあわせて出土。今年1月に発表された。
当時は土ごと取り上げられ、共同調査研究をしている橿考研で保存処置中だったが、今回片面のクリーニングが終わったため、公開された。手術用の顕微鏡などで観察しながら、竹串やピンセットなどで土やさびを取り除いたという。
鉄剣の屈曲は7カ所程度。剣は木製の鞘に収められており、樹種は現在調査中という。鞘や柄(つか)には漆が使われた痕跡があり、辰砂(しんしゃ)を原料とする赤色顔料が付着していたとみられる。橿考研の岡林孝作・学芸アドバイザーは「いま見えているのは出土時に上になっていた部分。残りがいいと予想される下の面のクリーニングが進めば、もう少しいろいろなことがわかると期待している」と話した。
残る片面のクリーニングは今秋ごろまでかかる見込みで、一般公開の時期は未定という。
古墳時代の刀剣に詳しい豊島直博・奈良大教授(考古学)は、「鞘や柄など『刀装具』をつけた状態で副葬されたようだ。柄の一部と鞘は重なる構造だったとみられ、裏返して土を慎重に取り除けば、装具の全体像が見えてくるのではないか」と話している。(清水謙司、今井邦彦)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル