真っ赤な西洋野菜のビーツを煮込んだウクライナ発祥とされるスープ料理「ボルシチ」。長野県朝日村観光協会と日本ウクライナ文化協会(名古屋市)などが24日、村でとれたビーツを使ってボルシチを販売する「ボルシチまつり」を村内で初めて開く。ウクライナから愛知県に避難している人たちが故郷の味に仕上げ、売上金を母国の戦災孤児の支援に充てる。
ウクライナ出身で、名古屋市に住むウクライナ文化協会副理事の榊原ナターリヤさん(38)が2年前、村産のビーツを食べたのが開催のきっかけ。友人の小石原祐子さん(44)が、おじで村観光協会理事の山田喜孝さん(64)から取り寄せた。ナターリヤさんは「色が濃くて甘く、ウクライナのビーツに負けないくらいおいしかった。畑の土質がウクライナの豊かな黒土と似ているのかもしれない」と驚いたという。
「本場のお墨付きをもらったビーツは、村の特産品になる」と考えた山田さんは、めいの小石原さんらに相談。ウクライナがロシアの侵攻を受けたため、チャリティー企画としてボルシチまつりを開くことにした。
ボルシチは、ウクライナの家庭に欠かせない「おふくろの味」だ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)は7月、ロシアの侵攻により食文化の存続が脅かされているとして、「ウクライナのボルシチ料理の文化」を「緊急に保護する必要のある無形文化遺産」のリストに登録している。
まつりで提供するボルシチは、ウクライナから愛知県に避難している7人やナターリヤさんら計10人ほどが村を訪れて作る。ウクライナ国民が大好きという香草のディルを効かせた、香り高いボルシチに仕上げるという。
ビーツは生産農家の下田明範さん(49)が、約100キロを無償で提供する。下田さんによると、村内でビーツを生産する農家は3軒ほど。大半は首都圏へ出荷され、地元ではほとんど消費されないという。ビーツをしぼったジュースは「飲む点滴」と呼ばれるほど体にも良いとされ、「まつりを機に地元でも消費が増えてほしい」と期待する。
15年ほど前に来日したナターリヤさんの両親や姉の家族は、いまも首都キーウ(キエフ)や近郊で暮らしている。ロシア軍は周辺から撤退したが、近くにミサイルが着弾することもあり、学校は再開できないままだという。ナターリヤさんは「日本でウクライナのニュースが少なくなっているように感じるが、戦争はまだ終わっていないことを改めて伝えたい」と話す。
ボルシチまつりは、緑のコロシアムで正午~午後3時。1杯500円(限定300食)。寄付も募り、売上金とともに戦災孤児を支援する現地のNGOに送る。(滝沢隆史)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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