東京五輪・パラリンピックが幕を閉じた。「1年延期」「無観客」など異例ずくめの大会は列島に何を残したのか。レガシー(遺産)は地域の活性化につながるのか。まずは、維持費が自治体に重くのしかかる競技会場について、今後のあり方を考える。
維持管理・修繕費で年24億円
祭典の熱気が去った国立競技場(東京都新宿区)を訪ねた。記念撮影をする人の姿が時折見られ、中からは鉄パイプがこすれるような金属音が聞こえる。原状回復の工事が来年3月まで続くようだ。
競技場は独立行政法人の日本スポーツ振興センター(JSC)が、民間への運営権売却などを検討している。ただ、買い手が現れるか見通しがつかない。使い勝手が悪く、巨額の維持費がのしかかるからだ。
JSCによると、維持管理費は年約11億円に上る。50年間の大規模修繕費を各年でならして加えると、合計で年24億円が見込まれるという。元東京都市大教授の小松史郎さん(集客都市論)は「もうかるスタジアムにするには、さらに改修費が要るため、企業は二の足を踏む」と話す。
スポーツ以外の収入源確保が課題だが、現状は屋根がなく、音響や空調が大型イベント向きの仕様にはなっていない。VIPルームなどビジネス利用での部屋も不十分だという。収容人数は6万8千人。国内で6万人規模のイベント自体が多くはない。「大き過ぎることが、かえってマーケットを小さくしている」
さらに都内には都の新規恒久施設が六つもある。有明アリーナを除く5施設で赤字が見込まれ、その合計額は年間10億円を超える。1億6千万円の赤字が見込まれる海の森水上競技場は、水面に浮かぶ消波装置に付着したカキの除去費用が上乗せされ、赤字額はさらに膨らむ見通しだ。
各施設の行く末を考えるために、宮城スタジアム(宮城県利府町)に足を延ばした。収容人数4万9千人を誇る東北最大の競技場だ。東京五輪では、有観客で男女サッカーの10試合が繰り広げられた。
宮スタは2000年、翌年の…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル