国語
昨年同様複数の文章の関連を問う問題が各大問で出題されている。全体的に出題意図の明確なオーソドックスな問題が多い。
―概評―
第1問(現代文)は一つの本文と生徒作成の文章が課された。漢字問題は3年ぶりに漢字の意味を問う問題がなくなり従来の形式に戻った。
第2問(現代文)は、語句の意味や文章表現について問う設問が3年ぶりに出題された。
第3問(古文)は、一つの本文に対し設問の中で関連する文章を提示するという形式や、全体の設問構成は昨年同様であった。
第4問(漢文)は、一昨年と同様に漢詩が含まれており、設問数・解答数は減少したものの、全体の分量は昨年と同程度であった。
【大問数・設問数・解答数】
・昨年と同様の4。
・昨年に比べ漢文で1減ったため、全体としては1減の23。
・昨年に比べ現代文で2増え、漢文で1減ったため、全体としては1増の38。
【問題量】
第1問は約3900字で昨年より500字程度増加、第2問は約3100字で昨年より1千字程度減少、第3問(古文)は約1200字で、昨年より100字程度減少、第4問(漢文)は188字で、昨年より4字減少した。
【出題分野・出題内容】
・近代以降の文章2題、古文1題、漢文1題という構成は昨年から変化なし。
・第1問(現代文)は渡辺裕『サウンドとメディアの文化資源学――境界線上の音楽』、第2問(現代文)は牧田真有子「桟橋」(問7で太田省吾「自然と工作――現在的断章」)、第3問(古文)は天野政徳「車中雪」(『草縁集』所収)。第4問(漢文)は杜牧「華清宮」(【詩】)・蔡正孫『詩林広記』(【資料】I~Ⅲ)・程大昌『考古編』(【資料】Ⅳ)からの出題。
【出題形式】
・第1問(現代文)は漢字問題、傍線部説明問題、構成・展開を吟味させる問題、本文の主題と関連するテーマで書かれた生徒作成の文章の推敲(すいこう)作業を完成させる問題からなる。
第2問(現代文)は近年出題のなかった語句の意味や本文中の文章表現について問う設問が見られ、複数の資料を用いた問題では評論をもとに登場人物について考察する会話文の空欄補充問題が出題された。
第3問(古文)は、本文を解説した文章を通して、本文における人物や情景の描写の仕方を考察させる設問が出された。設問構成・解答数は昨年とまったく同様。
第4問(漢文)は、漢詩とそれに関連する四つの資料からの出題。資料相互の関係性を問う設問や、資料の内容をふまえて漢詩の内容を理解する設問が含まれていた。
―難易度(全体)―
全体としてやや易化。昨年と比べて現代文、古文で正誤判定がしやすい問題が増加。漢文は昨年並み。
―設問別分析―
第1問
・問1 漢字の識別問題 難易度:標準
・問2 理由説明問題 難易度:標準
・問3 内容把握問題 難易度:やや難
・問4 理由説明問題 難易度:やや難
・問5 構成・展開を問う問題 難易度:標準
・問6 生徒作成の文章を推敲(すいこう)する問題 難易度:やや易
出典は渡辺裕『サウンドとメディアの文化資源学――境界線上の音楽』による。複数の文章が課された一昨年、昨年と異なり、一つの文章が課された。
問1では昨年まで出題されていた漢字の意味を問う問題が姿を消した。問3、問4では一部に判別に迷う選択肢が含まれていた。最終問は「生徒作成の文章を推敲(すいこう)する」という課題だが、文章の構成や論旨をおさえて取り組めば解答は難しくない。
第2問
・問1 語句の意味を問う問題 難易度:やや易
・問2 内容説明問題 難易度:やや易
・問3 心情説明問題 難易度:やや易
・問4 表現と心情の説明問題 難易度:標準
・問5 心情説明問題 難易度:標準
・問6 表現理解問題 難易度:標準
・問7 複数の資料による本文理解問題 難易度:標準
出典は牧田真有子「桟橋」(2017年発表)。昨年と同様、小説の一節からの出題である。
語句の意味を問う問題が3年ぶりに出題され、文章表現について適当でないものを選ぶ問題も見られた。選択肢の間違っている箇所がわかりやすく、全体的に正解は選びやすかったと思われるが、問7の(ii)は本文と【資料】それぞれの内容を理解したうえで対話の内容も丁寧に踏まえることが求められたほか、本文の描写を細かく確認することが求められる設問もあり、時間配分には注意する必要があった。
第3問
・問1 傍線部解釈問題 難易度:易
・問2 語句と表現に関する説明問題 難易度:やや易
・問3 和歌の趣旨把握問題 難易度:標準
・問4 解説文による内容理解問題 難易度:標準
江戸時代後期の歌人、国学者である天野政徳の手になる「車中雪」と題された擬古物語からの出題。折からの雪に心惹(ひ)かれた主人公が、従者を連れ、牛車をしたてて桂の別邸に向かう途次の雪の風情が描かれる。問4では、昨年の教師と生徒の対話形式が姿を消し、本文をよりよく理解するための解説文(約800字)に3つの空欄を設けてそれぞれ4つの選択肢から適当なものを選ぶ、という形式に変わった。
問1の傍線部解釈は枝問3つ、問2の語句と表現に関する問題は昨年同様。問3の和歌の説明問題では、基本的な掛けことばを踏まえる。
第4問
・問1 詩の形式と押韻の問題 難易度:やや易
・問2 語句の意味問題 難易度:やや易
・問3 返り点と書き下し文の問題 難易度:標準
・問4 詩句の解釈問題 難易度:標準
・問5 複数資料の内容説明問題 難易度:標準
・問6 複数資料による詩の内容理解問題 難易度:やや難
唐の詩人、杜牧の漢詩「華清宮」と、それに関連する四つの資料からの出題。2021年度本試験第1日程・22年度本試験と同様、漢詩を含む問題であった。
本文の分量は昨年と同程度。設問数と解答数は一つずつ減ったものの、注が多く、選択肢が長い設問(問5・6)もあるため、全体の分量は昨年と同程度である。従来の共通テストで出題されていた空欄補充問題が無くなったが、語句の意味や訓読、解釈に関する設問は変わらず出題されている。複数文章を関連付けて解く設問(問4・5・6)では、慎重な読解と的確な判断が求められた。(代々木ゼミナール提供)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル