福岡県大川市と熊本県を結ぶ国道443号を南下すると、JAみなみ筑後山川支所(みやま市山川町)の目の前に、巨大なミカンのオブジェがどーんと鎮座する。特産品のミカンのPRであろうことは容易に想像がつくが、取材してみると、そこには忘れられた逸話があった。
【写真】山川地区にかつてあった高さ約13メートルのタケノコのオブジェ
外皮のぶつぶつ、薄皮のごつごつ、白いスジ、むきかけてこぼれ落ちたかのような房…。みずみずしいミカンの香りすら感じるほど、本物そっくりだ。この巨大オブジェは強化プラスチック製で、土台を合わせた高さは約3.7メートル、幅約5メートルもある。
山川地区は県内有数のミカン産地。特に極早生(ごくわせ)や早生の豊かな甘みに定評があり、年間約6500トンを生産する。オブジェはみやま市商工会やJAが「山川みかん」のPRのため、2012年に設置した。参考にしたのは熊本県天草市にあるデコポンのオブジェ。同じ業者に製作を依頼したが、“本家”よりやや大きくしたのは後発の意地か。
ところが実はもっと大きなオブジェがすぐ近くにあったと耳にした。
同じ443号沿いの約200メートルほど南。今は姿を消してしまったが、直径約3.5メートル、高さは約13メートルにも及ぶタケノコのオブジェが存在したという。山川地区は県内有数のタケノコ産地でもある。1996年に本物の竹を使い、地元住民が手弁当で製作。だが、443号バイパスの建設工事に伴う周辺工事で2009年に撤去された。近くで食料品店などを営む古賀セイ子さん(65)は「大きくて立派だったのに」と懐かしむ。
その撤去補償費で巨大タケノコを再建…と思いきや、「やっぱり山川の最大の特産品はミカン」と造られたのが現在のオブジェだった。
これにもバイパス建設に絡んだ逸話が残る。開通したバイパス沿いに置く予定だったオブジェは、完成が早かったため「仮置き」として、国道沿いの現在の場所に設置された。だが、選果場や旬の時期に営業する直売所の目印にもなったことから、移設の話は立ち消えになったという。
タケノコとミカン。巨大オブジェの変遷に、地元特産品PRの主役交代が垣間見えた。
(森竜太郎)
西日本新聞社
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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