福岡県中間市の双葉保育園で倉掛冬生(とうま)ちゃん(5)が送迎バスに閉じ込められて死亡した事故で、園長が1人で迎えのバスを運行する状態が約1年半前から続いていたことが、園側への取材で分かった。当初は同乗の職員がいたが、バスの利用者が少ないため、配置を変更したという。
冬生ちゃんは7月29日、登園の際に乗ったバスに取り残され、熱中症で死亡した。このバスは園長が1人で運行し、園児7人を乗せて園に到着後、冬生ちゃんがまだ残っていることに気づかずバスを施錠していた。
園の代理人弁護士によると、双葉保育園は約140人の園児を預かり、朝は2台のバスを運行していた。しかし、大半の保護者は自ら自家用車などで送迎し、登園は午前7時半~8時ごろに集中。園児の受け入れに人手がかかるため、園長が運転するバスには約1年半前から職員を乗せていなかったという。
園ではバスに乗る際、園児の健康状態などを書いた「バスカード」を保護者から受け取り出欠を確認することになっていた。しかし園長が1人で運行するようになり、カードを受け取らずに乗車させることがあったという。事故があった日も園長はカードを回収せず、担任らは冬生ちゃんのカードがなかったため欠席だと思い込んでいた。
もう1台のバスは、運転者のほかに職員が同乗しており、カードも乗車時に回収していた。
福岡県と中間市は2日、双葉保育園に対する特別監査を行った。職員約10人が園に入り、県などによると、送迎時の態勢や出欠確認の方法などについて職員から聞き取ったという。今後も複数回監査を実施して園の運営実態や安全管理体制などを調べ、行政指導を行うかを判断する。
県は児童福祉法、市は子ども・子育て支援法に基づく監査。特別監査は、年に1回の一般監査と異なり、園児の死亡など重大事故が発生した場合に実施される。
双葉保育園は2日も園児の受け入れを続けた。弁護士によると、急に仕事を休めない保護者もいるため、市から保育を継続するよう指示されているという。
保護者からは不安の声が聞かれた。男児を預けた保護者の女性は「事故があって不安だけど、仕事があるのでこのまま預けざるを得ない」。待機児童の問題もあるなかで転園先が見つかるのか心配で、今度、市役所に相談するという。
30代の男性は息子を休ませ、当面は家で妻が面倒を見るという。「友達もいるし、あと少しで卒園。そのまま通わせたい気持ちもあるけれど……」と悩む。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル