刑事罰の対象年齢を引き下げる少年法改正につながるなど、大きな影響を与えた神戸連続児童殺傷事件。その記録を、なぜ裁判所は廃棄してしまったのか。最高裁の報告書からは、保存に消極的だった姿勢が浮き彫りになった。遺族の土師守さん(67)は2日に会見し「私はこの事件は歴史だと思っている。裁判所は、歴史的資料だという考えが欠けていた」と述べた。
最高裁は、少年事件の記録の保存期間を「少年が26歳に達するまでの期間」と定める一方、全国的に社会の耳目を集めた事件などは、期間後も残す「特別保存」の対象としている。
先月公表された最高裁の報告書によると、同事件の記録の廃棄に先立って、神戸家裁の廃棄担当者は「特別保存の要件に当たる可能性がある」と考え、当時の所長に話を持ちかけた。
だが所長は、自身が事件記録を特別保存とするか否かを判断する立場にあるとの認識が欠けていたため、廃棄担当者に意見を述べたり判断したりすることはなかったという。
そのため担当者は自身が判断しなければいけないと思い、「神戸家裁で特別保存にした事件はない」「少年事件は非公開で一般の民事事件とは異なる」と考え、廃棄を決めたという。
「貴重な資料で保存すべきだ」とする裁判官の声もあったが、保存に結びつくことはなかった。
この日、事件で淳君(当時11)を亡くした土師さんは神戸家裁で、最高裁職員から直接、内容の説明と謝罪を受けた。
説明後に会見を開いた土師さんは、廃棄の経緯に触れ「怠慢だなと思った」と指摘。「記録は、再発防止や検証のためにも、被害者支援のためにも必要」とし、何より「被害者遺族にとっては子どもが生きた証しでもある」と強調した。(黒田早織)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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