在日コリアンが多く暮らすウトロ地区(京都府宇治市)の空き家に放火したなどとして、非現住建造物等放火や建造物損壊などの罪に問われた奈良県桜井市の無職有本匠吾被告(23)に対し、京都地裁は30日、求刑通り懲役4年の実刑判決を言い渡した。増田啓祐裁判長は、特定の出自を持つ人々への偏見や嫌悪感などに基づく身勝手な動機だとした上で「暴力的な手段で世論を喚起することは、民主主義社会で到底許されない」と述べた。
判決によると、有本被告は昨年8月30日、ウトロ地区の空き家にライターで火を付け、隣接する住宅など計7棟を全半焼させたほか、同年7月24日、名古屋市中村区の韓国民団愛知県地方本部と韓国学校の雨どいに火を付け、壁面などを損壊させた。
増田裁判長は、有本被告について「在日韓国朝鮮人に嫌悪感や敵対感情などを抱き、離職などで自暴自棄になっていた」と指摘。うっぷんを晴らすとともに、在日韓国朝鮮人や日本人を不安にさせて世間の注目を集め、排外的な世論を喚起したいと考え、名古屋の民団の事件に及んだとした。
だが、事件が世間の注目を集めなかったとして、ウトロ地区の歴史を伝えるため、今年4月に開館予定だったウトロ平和祈念館を狙ったと説明。名古屋の事件では着火剤を使っていたが、ウトロ地区の事件では発火装置を使うなどしたとし、犯行をエスカレートさせた点も軽視できないとした。
その上で、動機について「在日韓国朝鮮人という特定の出自を持つ人々への偏見や嫌悪感などに基づく独善的かつ身勝手なもの」であり、被害を考えずに暴力的な手段に訴えたと言及。「相当に厳しい非難が向けられなければならず、刑事責任はかなり重い」と量刑の理由を説明した。(徳永猛城)
国内にヘイト行為を直接規制する法律なし
国内にはヘイト行為を直接規制する法律はなく、2016年施行のヘイトスピーチ対策法も国や自治体に差別の解消に向けた取り組みを求める「理念法」にとどまる。被害者からは、海外のように刑罰を科す法整備を求める声も根強い。
司法は既存の法律の枠組みで…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル