防衛省は15日、地上配備型のミサイル迎撃システム「イージス・アショア」配備計画を凍結した。計画がこのまま白紙となれば、政府は弾道ミサイル防衛(BMD)計画を根底から作り直さなければならない。その影響は北朝鮮の核・ミサイルへの備えだけでなく、急速に強まっている中国の海洋進出への脅威に対する警戒態勢にも及ぶ。 日本の弾道ミサイル防衛は2段構えで、まず日本海上のイージス艦が迎撃ミサイルSM3を発射し、迎撃を試みる。打ち漏らした場合は地上への着弾直前、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が迎撃する。 海上自衛隊はイージス艦を7隻(来春に1隻就役予定)保有する。北朝鮮は昨年13回、今年は4回の弾道ミサイルを発射。イージス艦の洋上展開が常態化し、乗員の人繰りや補給、整備の面で負担となっている。 本来任務である東シナ海などの海上での警戒・情報収集任務が手薄になる弊害も出ていた。政府がイージス・アショア導入を決めた最大の理由は、弾道ミサイル防衛網の強化に加え、既存のイージス艦を本来任務に振り向けたいからだ。 最近は北朝鮮のミサイル以上に、中国の海洋進出が脅威になっている。イージス艦は中国軍の動きを警戒し、中国機などが発射する巡航ミサイルを迎撃する能力を備える。イージス・アショアが配備されなければ、イージス艦の一定数を引き続き日本海などでの弾道ミサイル防衛に当たらせざるを得ない。 河野太郎防衛相の判断を受け、自民党国防族のベテランは「代替案はあるのか。日本の周辺環境の悪化を考えれば防衛力強化は待ったなしだ」と危機感を募らせる。イージス・アショア導入を前提に構想してきた国防態勢は不透明感を増した。(田中一世)
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