日浦統
北海道横断自動車道工事の用地取得をめぐり、国土交通省北海道開発局の釧路道路事務所が、地権者4人に対し、工事費の水増しなどの不正な利益供与を行っていたことがわかった。総額は2017~20年度で約9750万円にのぼる。10日、外部の有識者による第三者委員会が報告書を公表するとともに、開発局が調査結果を明らかにした。
昨年9月に不適正な支出が発覚し、12月に第三者委が設置されていた。開発局は近く、不正に関与した職員らを処分する方針。
報告書によると、問題の工事は24年度開通予定の阿寒インターチェンジ(IC)―釧路西IC間。釧路道路事務所の複数の職員は17~19年度、地権者の度重なる要求に応じて法的な根拠のないまま、舗装工事などの費用や課税相当金など計約9150万円を支出した。膨らんだ費用を捻出するため、工事の設計書に虚偽の費用を計上する組織的な改ざんも行われていたとされる。
用地取得に伴う地権者への補償は現金が原則。工事などの「現物補償」が認められる場合もあるが、手続きが必要となる。職員はこの仕組みを知らず、事実上の運用で補償していた。また、本来は補償対象ではない課税相当金も支払っていた。
第三者委の奥田正昭委員長(弁護士)は「運用での補償は工事を円滑に進めたい現場に便利だったこともあり、長年行われていた」として、「本局を含めた組織全体の責任問題として自覚すべきだ」と指摘。再発防止のため、「運用による現物補償は廃止すべきだ」と提言した。
この事案を受けて開発局が調査したところ、同じ区間の工事で別の地権者3人に対しても、それぞれの要求に応じた不正な利益供与が見つかった。石塚宗司局長は「公務に対する信頼を大きく失墜させるもので心よりおわび申し上げる。再発防止に努めるとともに信頼回復に向けて取り組む」としている。
開発局では21年、士別道路事務所の元所長が官製談合防止法違反の罪で有罪判決を受けた。(日浦統)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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