地理B
図表の分析等は、正確な知識があれば正解できる。とはいえ、前年よりも工夫されたグラフや地図が多いので、注意して取り組み、失点を防ぎたい。
―概評―
地理の全分野について満遍なく学習することが求められている。図表の分析等は正確な知識があれば正解できる問題が多いので、手堅く解答したい。前年より解答に手間取る問題が見られるものの、比較的練られた良問が目についた。
【大問数・設問数・解答数】
・5で昨年から変更はない。
・30で昨年から変更はない。
・31で昨年から変更はない。
【問題量】
・大問の問題文、小問の図、表、写真、選択肢表などの文字を除いた、設問文および選択肢の文字数は約1万字強で、昨年と同程度であった。問題文を迅速に読み、判断することが求められる。
【出題分野・出題内容】
・出題分野は、自然環境と自然災害、資源と産業、人口・都市、世界地誌、地域調査の5分野である。
・出題内容は、第1問は「自然環境と自然災害」、第2問は「資源と産業」、第3問は「日本の人口や都市をめぐる諸問題」、第4問は「インドと中国の地誌」、第5問は「利根川下流域の地域調査」で、大問の設問数は、各6である。解答数は第1問に1設問で二つ解答する設問があり、解答数は7であるが、第2問以下は各6である。
【出題形式】
・四つの文の4択正誤判定問題は1問、文の下線部の4択正誤判定問題は3問、2項目4択の組み合わせ問題は8問、2項目6択の組み合わせ問題は3問、3項目6択の組み合わせは7問、表中の4択問題は2問、図中の4択問題は5問であった。また、今年度は新たに図中の5択中の異なる選択肢を一つずつ選ぶ問題が第1問に2問あり、以上小問計31であった。
―難易度(全体)―
初見の図表類、読み取りに時間のかかる図表類が散見されるが、全体としては昨年並みの難易度である。
―設問別分析―
第1問
・自然環境と自然災害 難易度:標準
自然環境と自然災害に関する問題。問1は気候や気象に関する現象の時間、空間スケールに注目した問題で目新しい。問2はサンゴ礁とマングローブの分布を暖流、寒流という観点から考察する。問3は月別・時間別の気温分布を等値線で示した見慣れない図であるが、日較差、年較差に注目すればよい。問4は五つの同一の選択肢から二つの問いに答える形式で、火山分布やハリケーンの襲来地域という基本的な知識で解ける。問5は海溝の位置や日本の直下型地震を想起する必要がありやや難しい。問6は森林や田畑の治水機能を想起すればよい。
第2問
・資源と産業 難易度:標準
資源と産業に関する問題。問1は初見の図をよく見つつ、三圃式農業の知識で解く。問2は降水量、灌漑(かんがい)設備にかかる費用、土地生産性などから考察する。問3は遺伝子組み換え作物に関する知識をもとに図中の栽培地域、栽培作物を読み取る。問4はアフリカ諸国の羊肉生産、タイの鶏肉生産などに注目する。問5はポルトガルがユーラシア大陸の西端に位置することや、航空輸送では軽量で高価格な製品を輸送する傾向にあることから判断する。問6は環境意識の高まりが特に進んでいるドイツで古紙の再生利用が進んでいると判断する。
第3問
・日本の人口や都市をめぐる諸問題 難易度:標準
日本の人口や都市をめぐる諸問題に関する問題。問1は東京への一極集中と九州、四国の位置の違いから考える。問2は東京都区部の指標の変化で、バブル景気の影響で地価が高騰したことが分かれば容易。問3は地方都市の3地点の様子を会話文から類推する問題で頻出。問4は都道府県別の割合に関する正誤判定で、会話文をよく読めば容易。問5は図の4カ国のうち、特に少子高齢化が進んだ日本の従属人口指数の割合が高いことに注目する。問6はイギリスの旧植民地であったインドと、EU加盟によるポーランドからの移民の増加に注目する。
第4問
・インドと中国 難易度:標準
インドと中国の比較地誌の問題。問1は2カ国各地の自然環境についての細かい知識。問2は2カ国における小麦、米の単作地帯と二毛作地帯の区別がついているかが問われた。問3は2カ国の経済成長と人口についてで、問題文をよく読めば容易。問4は2カ国の経済構造の変化についてで、中国の方がサービス業の割合が高いことに注目する。問5はオーストラリアから中国への輸出が盛んで、2カ国ともオーストラリアへの移民が多いことに注目する。問6は1月に中国の大都市部でPM2.5の濃度が高いことが分かれば容易。
第5問
・利根川下流域の地域調査 難易度:標準
利根川下流域の地域調査。問1は図をもとにした集水域の読み取りと簡単な計算問題で、落ち着いて解けば容易である。問2は鉄道の沿線で、市役所を範囲に含むFが最も建物用地が多いと考える。問3は1931年の地形図から古くから中心地であった場所を、会話文のヒントや渡船または橋の間隔から1981年の橋の分布を判断する。問4は水害の年表と対象地域、「大きな河川の下流域」に着目して解答する。問5は国外からの輸入量の方が養殖生産量よりも変化が激しいと判断する。問6は探究課題に対する適切な調査方法を考える力が問われた。(代々木ゼミナール提供)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment