新屋絵理
被告が反論できない争点で有罪を導いた判決は「不意打ち」で法令違反だ――。東京高裁(大善文男裁判長)で15日にあった控訴審判決はそう述べ、傷害事件の審理のやり直しを命じた。
被告の男(31)は2020年4月、男性が車の前にいるのに、自身が運転する車を発進させてけがを負わせたとして傷害罪で起訴された。被告は「男性に気が付かなかった」と無罪を主張していた。
一審・東京地裁判決は、車の同乗者の証言などから、被告は男性に気付かなかったと被告側の主張を認めた。ただ、男性とは別の男性が車の前付近にいたと指摘し、被告が「人に接触するかもしれない」と認識しながら車を発進させたと判断。起訴状にある男性ではなく別の男性にけがを負わせようとしたとして、懲役3年執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。
高裁「一審の手続きに法令違反」
これに対し、弁護側は「争点になっていない部分で判断された」として控訴した。
二審判決は、起訴状が示していない別の男性に被告が気づいていたと一審が判断した点を問題視。この点について被告側が意見を述べる「防御権」を与えずに審理したことをふまえ、「一審判決は被告に不意打ちを与えた」と判断した。
そのうえで、起訴内容と判決の認定事実が異なる場合は起訴内容を変更しなければならないとし、「一審の訴訟手続きは判決に影響を及ぼす明らかな法令違反がある」として審理のやり直しを東京地裁に命じた。(新屋絵理)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル