能登半島地震で負傷したけがの痛みに耐えながら再起に挑む伝統工芸品「輪島塗」の塗師屋(ぬしや)が、石川県輪島市にいる。
「わじま龍作」ブランドを展開する池端漆香堂の社長・池端龍司さん(56)。塗師屋として、輪島塗の製造から販売までを請け負っていて、3人の職人を抱える。
地震があった1月1日、池端さんは工房兼店舗の1階にいた。建物は1階部分が潰れ全壊した。どうやって逃げ出したか思い出せないが、気づいた時には屋外にいた。右肩を2カ所、骨折していた。
すぐに病院へ行ったが、地震後の混乱で、痛み止めはなかった。自分より重傷の被災者もいたため、我慢することにした。
倒壊した店舗には、正月前に百貨店などから戻ってきた作品や、製作に半年から1、2年かけた完成間近の作品が残っている。窓や建物の隙間から、大きな輪島塗のテーブルや椀(わん)なども確認できた。
骨折した右肩は、2カ月近く経った今も痛みが残る。医者からは手術が必要な状態だと言われているが、作品が心配なので、店から離れることはできなかった。
このほど、知人の紹介で、重機を使って倒壊した建物から作品を取り出す作業のめどが立った。4月10日には、東京の日本橋三越本店で販売会があり、約300点を出品する。同月には仮工房で作業を始める予定だ。
池端さんは「ピンチをチャンスに変えたい。マイナスからのスタートだが、輪島塗の良さを被災前より広めたい」。(上田幸一)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。
※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment