伊予鉄道(松山市)の観光列車「坊っちゃん列車」が運休となってから、もうすぐ2カ月になる。
「運転士不足」が主な理由だという。愛媛に赴任して1年。時折遠くで汽笛を聞きながら、いつか乗らねばと思っていたのに。
取材では、たびたび松山市を出て、遠く離れた海沿いや山間部を訪れた。必ずといっていいほど、廃校となった校舎があった。
松山空港では、コロナ禍で運休していた松山―ソウル線が3月末に運航を再開し、10月末からは毎日運航に。釜山を結ぶ定期路線も11月から新たに始まった。外国人観光客が街中に戻ってきた。
坊っちゃん列車、廃校、外国人。互いに関係ないようにみえるが、あるキーワードでつながっている。
人口減少問題だ。
坊っちゃん列車の運転士不足は、他業種との人材の奪い合いが起こした面はある。ただ、そもそも若い世代がたくさんいれば起きない問題でもある。
廃校については言うまでもないだろう。山間部の過疎化は進むばかりだ。
そして、外国人。なぜ人口減少問題と関わるかといえば、国内の観光需要が減るなかでは外国からの呼び込みがカギを握る。労働力確保の面でも同じことがいえる。
右肩上がりの「昭和的思考」から脱却を
愛媛県は2060年に人口が20年比で4割超も減るとの推計を昨秋出した。育児と仕事の両立を応援する企業への奨励金を設けるなど対策を打ち出す。
北欧では子育て支援などが充実し、日本の自治体もモデルとしてきた。だがフィンランドではここ数年、1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す「合計特殊出生率」が低下している。少子化対策は、事ほどさように難しい。
政策はもちろん大事だが、もっと大切なのは、人口減少社会に合わせた生き方を私たち一人ひとりが模索することだ。
人口や経済の右肩上がりだけを求める「昭和的思考」から脱し、多様で自由な人生を描こうとする動きにも、来年は目をこらしていきたい。(神谷毅)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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