沖縄の日本復帰から50年。中国の軍備増強やウクライナ有事などで安全保障への不安が高まる中、沖縄への偏在が続く米軍基地をどう考えるか。今回の朝日新聞社と沖縄タイムス、琉球朝日放送合同の世論調査結果が持つ意味を、この分野に詳しい我部政明・琉球大名誉教授(国際政治学)に聞いた。
沖縄では在沖米軍の縮小または全面撤退を求める回答が7割を超えたが、全国では現状維持が4割。基地の負担感の違いがくっきりと表れた。一方、米軍による事件事故の日本側の捜査を制約する日米地位協定の改定を求める声は沖縄、全国ともに9割を超えた。具体的にどう改定するかは判然とせず、抽象的だからこそ「けしからん」とナショナリズムをかきたて、賛成しやすいのだろう。
米軍普天間飛行場の辺野古移転への賛否で全国は「その他・答えない」が34%もあり、本土の無関心がうかがえる。同じ1人分の回答でも、沖縄とは思いの強さが全く違うはずだ。
その辺野古移転で沖縄の反対が54%にとどまり、在沖米軍が日本の安全保障に「大いに」「ある程度」必要との回答が7割近かったのが目を引く。ウクライナ有事の影響もあるが、底流にあるのは中国に対する意識の変化だ。沖縄は歴史的なつながりから中国への親近感が強かったが、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件(2010年)前後が潮目となった。本土で広がる反中国の世論の影響も受け、経済成長とともに軍備増強を進める中国への警戒感が高まっている。
また沖縄では旧日本軍が横暴だったという記憶があり、自衛隊への抵抗感もあった。それが今回、沖縄での部隊強化に好意的な回答が目立った。復帰50年を経て、世代交代とともに、県民が日常的に触れる情報と認識の「日本化」が進んだ結果ともいえる。自衛隊も含め、「基地ノー」と言いづらい空気もあるだろう。
それでも米軍基地縮小を求める声は大きく、日米安保条約への賛成も58%と、全国の82%より低い。すぐそばの基地による事件や事故という弊害への実感と、頭でイメージする危機意識。基地は減らしたいが、反対とも言い難い。論理的に矛盾するが、それが沖縄の現実。揺れる思いが表れた数字だ。
それは、本土の人が沖縄を理…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル