塾、対面指導ないのに授業料は徴収 減額してもらえる?

コロナ法律相談 回答:秋山直人弁護士

新型コロナウイルスが影響を及ぼした「学びとお金」に関して、読者から寄せられた相談をもとに弁護士に聞きました。(聞き手・伊藤和行)

 Q 息子が通う学習塾は休校後、テキスト送付や解説動画配信、電話・メールでの質問対応をしてくれますが、授業料は全額引き落としとなっています。対面授業がなく質が低下しているのに、全額徴収されるのは納得できません。

 A 塾側の履行すべき義務ができない状態(履行不能)になっているかどうかがポイントとなります。当事者である塾側と質問者側の双方に落ち度(帰責事由)がないのに履行不能になっている場合、民法536条1項により授業料の支払い義務の消滅を主張することができます。

 しかしご質問のケースでは、塾側としてもテキスト送付や解説動画配信、質問対応など、困難な状況の中でできるだけの対応を行い、塾側の義務が一応は履行されていると評価できます。このため履行不能を主張することは困難と考えられます。

 塾側の提供するサービスの質が低下していることは否定できないとしても、緊急事態宣言や休業要請に伴うやむを得ないものと考えられ、塾側に落ち度があるものではありません。このため、塾側の契約違反を理由に契約を解除したり損害賠償を求めたりすることは難しいでしょう。以上から、授業料の返還や減額の請求は困難です。

 一方、例えば対面での指導でないと意味をなさないような習い事の場合では、民法536条1項による対価の支払い義務消滅を主張できる余地があります。

    ◇

 あきやま・なおと 2001年弁護士登録。福島第一原発事故被災者の損害賠償請求や、過労死・過労自殺問題などに取り組んできた。

主な相談窓口

◆日本弁護士連合会無料相談(一般向け) 電話(0570・073・567)かホームページ(HP)で6月19日まで予約を受け付ける。電話は平日午前11時~午後3時、HPは24時間可能。アドレスはhttps://www.nichibenren.or.jp/news/year/2020/topic2.html。近隣の弁護士が数日以内に折り返し連絡し、相談にのる。初回は原則無料。

◆日弁連「中小企業のためのひまわりほっとダイヤル」 電話(0570・001・240)かHPで予約を受け付ける。電話は平日午前10時~正午、午後1~4時。HPは24時間可能で、アドレスは一般向けと同じ。地元の弁護士が順次折り返し連絡し、資金繰りなど事業者向けの法律相談に応じる。初回30分無料。

◆金融機関との取引などについての相談 金融庁 新型コロナウイルスに関する金融庁相談ダイヤル(0120・156811、平日午前10時~午後5時)

◆中小企業・小規模事業者・農林事業者の融資や返済についての相談 日本政策金融公庫 事業資金相談ダイヤル(0120・154・505、平日午前9時~午後5時)

◆日本司法書士会連合会「生活困りごと相談」 電話(0120・315199、平日午前11時~午後5時)もしくはウェブ面談(平日午後2~5時)で司法書士が無料相談に応じる。ウェブ面談はメール(sodan@nisshiren.jp)で事前予約が必要。前日午後4時までに氏名と希望日時を送り、確定の返信が届けば予約が完了する。当日に面談で使うURLがメールで送られてくる。1回約30分。

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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