大手中学受験塾「四谷大塚」の元講師が、在職中、教え子の女児を教室に呼び出し、わいせつな言動をさせたうえ盗撮した疑いで逮捕された。塾では大人と子どもが1対1になる場面も少なくない。性被害から子どもを守るにはどうすればいいのか。子どもの性被害に詳しい桜井鼓(つつみ)・追手門学院大准教授(犯罪心理学)に聞いた。
――学習塾では、講師が子どもの体を触ったり、盗撮したりといった事件がたびたび起きています。防ぐ方法はありますか。
四谷大塚の事案について詳細を把握しておらず、これを受けて塾が取るべき対策には事案の内容によるので一概には言えません。ただ、過去の性被害の事案を踏まえて言えるのは、子どもが「いやだ」といえるようにすることが、予防につながるということです。
加害者に直接「いやだ」と言うこと、その場から逃げること、加害行為がエスカレートする前に少しでも「いやだ」と思ったら大人に相談することが大事だと、日ごろから言い聞かせておく必要があります。特に一緒にいることの多い保護者はこうした相談の受け手になりやすく、重要な役割があると言えます。
「何となく不快」 相談するよう言い聞かせて
――保護者が子どもに伝えておくべきことは。
水着で隠れるところなど、体の「プライベートゾーン」は他人に触らせないことをよく言って聞かせることです。そのうえで、自分が「いやだ」と思ったことは何でも話していいと、よく言い聞かせてほしいですね。
性的な被害に発展する前兆として、頭や手などプライベートゾーン以外への接触が増えるというケースがあります。この時点で保護者が把握できれば、被害を未然に防げるかもしれません。接触が頻繁になるなど、子どもが「何かおかしい」「何となく不快だ」と感じたら何でも相談するよう言っておくとよいでしょう。2人きりのときに無断で撮影されるといった場合なども同様です。
SNSで講師とつながり 「基本は控えた方が」
――塾講師や教員など子どもと接する立場の大人が、SNSなどで個人的に子どもとつながろうとするケースもあるようです。SNSやスマートフォンの管理はどうするべきですか。
子どもと2人きりになるためにSNSを悪用する大人もいるので、基本はつながること自体を控えた方が良いと思います。ただ、保護者が全てのやりとりをチェックするのも物理的に難しく、保護者に断らずに大人とやりとりする子もいるかもしれません。
その場合に備え、トラブルなどがあったら保護者に相談するよう言い聞かせておくのがいいでしょう。
その際、大事なのは、普段からよく話を聞くよう心掛けるなど、子どもと何でも正直に話せる関係を築いておくことです。その方が、保護者がスマホの使い方を厳格に管理するより被害に遭いにくいという研究もあります。
SNSなどでのやりとりで対処が必要なのは、大人の側が2人きりで会おうとするケースや、性的な言動をするケースです。内容を問わず「誰にも言っちゃ駄目」などと口止めをしてきた場合も注意が必要です。
子どもが打ち明けにくい場合も
――子どもが恥ずかしく思ったり、加害者との関係が崩れるのを恐れたりして相談しにくいこともあるのでは。
そういうことがないように、子どもが話しやすい関係性を普段から築いておくのが大事ですが、どうしても打ち明けにくいということもあるでしょう。
そこで、子どもをよく観察することも意識してほしいと思います。
いつもより元気がないとか、ものを食べない、口数が少ない。そんなちょっとした変化を見過ごさず、「何かあったの」と声をかけてほしい。
何度も体を触られている子は、触れようとする手をとっさに避けることもあります。そうした異変も見逃さないようにしたいものです。
■子どもの相談、聞き流さない…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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