記者解説 北海道報道センター・平岡春人
アイヌ民族の人々が「キムンカムイ(山の神)」と呼んであがめていたのがヒグマだ。いま、人間との関係に異変が起きている。
北海道は本来は期間外の春先の狩猟について、生活空間にヒグマが出没するのを防ぐことを目的に、事実上認める方針を11月に決めた。冬眠から覚めて活動を始める春に捕獲する。早ければ来年からの実施をめざす。
道内では1966年から90年まで「春グマ駆除」が行われていた。道は猟を奨励し、ハンターが山に分け入って射殺していった。72年の札幌冬季五輪をきっかけに各地で開発が進み、農作物や人に害を及ぼす駆逐すべき存在だとみなされていた。
一部地域では捕りすぎから絶滅が危惧される事態になった。環境保護や生物多様性の重要性が徐々に知られるようになり、道の対応は「絶滅政策」ではないかとの批判が高まった。道は春グマ駆除を90年に廃止。ヒグマは保護すべき北海道の象徴に戻った。
状況を一変させたのが昨年6月の事故だ。札幌市の市街地に体長161センチ、体重158キロのオスが現れ、市民ら4人を次々に襲った。会社員の安藤伸一郎さん(45)は出勤途中に、背後から右腕をかまれた。「振り向くと、歯をむき出しにしたクマの顔が目の前にあった」という。肋骨(ろっこつ)が6本折れ、背中などに計140針を縫う重傷を負った。オスは市の要請を受けたハンターに射殺された。
道内では昨年度、ヒグマに襲…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル