ひきこもり状態にある当事者や家族を行政はどう支えていくか。特に、40代以上の当事者への向き合い方は、就労経験や意欲などの違いによって変わってくる。若者を主な対象にした従来の施策からの転換も求められ、各地の自治体が模索を続けている。
都内のビルの一室。ひきこもりに関する相談を電話やメールで受ける都の「ひきこもり地域支援センター」がある。平日の午後、相談員が受けた80代の女性からの電話は、いじめをきっかけに数十年間ひきこもり状態が続く50代の息子についてで、女性は途方に暮れた様子だったという。
センターは、全国の都道府県・政令指定市が設けている。都の場合、運営をNPO法人「青少年自立援助センター」(東京都福生市)に委託。今年5月に川崎市で児童らを襲った男がひきこもり状態だったと判明した後、電話が鳴りっぱなしになったという。6月は新規の電話相談が前年同月の3倍(219件)だった。
青少年自立援助センターは、主に若者の自立支援で実績があるが、近年は中高年の支援にも力を注ぐ。センターが関わった40代の男性の場合、高校中退後からひきこもり状態だったが、センターのプログラムや職場実習、アルバイトなどを経て医療機関の介護補助の仕事に就いたという。河野久忠理事長は「40、50代の場合、就労経験が全くないか、途切れ途切れでもあるかでアプローチが変わる。自分より若い支援者に指示されたくないといった心情にも配慮します」と話す。
朝日新聞が、ひきこもり状態の人への支援について67都道府県・政令指定市に実施したアンケートでは、40歳以上の支援について、「ブランクから就労をあきらめている」「支援が途切れてしまう場合がある」などの声が自治体の担当者から寄せられた。
関東地方の自治体の相談員を務める男性が最近経験したのは、仕事でつまずいた後、十数年ひきこもり状態が続く50代前半の男性への就労支援だ。80代の親の要請で訪問を始め、本人と話すまでに1年。さらに訪問を1年続けて就労意欲を確認した。昨年、ある企業での事務職を提案したが、本人が行きたがらず、次の策が見えないままだ。
相談員は「選択肢を多く用意して、その人に合うものが見つかるようにしたい。このままだと相談を受けても出口が十分に示せないままの人が増えてしまう」と危機感を語った。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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