増田寛也氏も想定外の感染爆発 5年前から備えていたら

 東京一極集中について、「消滅可能性都市」の指摘など問題提起を長年続けてきた元総務相増田寛也さん(69)。「密」により感染が広がるコロナ禍において、人口過密に苦しむ都市の姿をどう見ているのか。コロナ禍以後の人口動態を分析しつつ、今後の東京について進むべき道を語りました。

ますだ・ひろや

旧建設省を経て、1995年から岩手県知事を3期務め、2007~08年に第1次安倍内閣などで総務相。14年、座長を務める民間研究組織「日本創成会議」が発表した「消滅可能性都市」は、政府が「地方創生」を打ち出す契機になった。現在、日本郵政社長。

      ◇

 ――増田さんが座長を務めた日本創成会議が行った2014年の消滅可能性都市の指摘と提言は大きな反響を呼びました。政府や各地の自治体などが危機感を抱いて地方対策に乗り出すきっかけになりましたが、東京への人口流入のトレンドそのものは続きました。しかしこのコロナ禍において転出超過が続いています。この現象をどう見ていますか。

消滅可能性都市

2040年までに全国の計896自治体で、20~39歳の女性が半減する、と有識者による民間研究機関「日本創成会議」が独自に試算し、14年に発表した。このままでは人口減少が止まらず、行政機能の維持が困難になると警鐘を鳴らした。  国立社会保障・人口問題研究所が前年にまとめた推計では、地方から大都市への人口流出は20年までに落ち着くとしていたが、同会議は大都市で医療・介護分野の求人が増えるため、年間6万~8万人規模の流出が続くと仮定した。

 私も、毎月の住民票移動データを注意深くみてみましたが、コロナというのはこれまでの人口の動きを大きく変える、それだけの破壊的な力をもっているなというのを改めてみたところです。

 今年2月まで8カ月連続で都から転出超過が続きました。東日本大震災のあと、東京電力福島第一原発事故の放射能の影響で転入が一時期ずいぶん少なくなったことはあったのですが、それでも転入超過は続いていた。今回はコロナ、「密」がおそれられたということだったと思います。コロナ禍は、東京の持つある種の脆弱(ぜいじゃく)性を明らかにした。

 3月、4月は、就職や大学への進学で多くの方が東京に入ってくるので、転入超過にはなりましたが、その数は前年までに比べてはるかに少ない数です。5月はまた転出超過にふれるとみています。

 東京の脆弱性や危険性については、日本創成会議や、その後の都知事選挙のときも指摘していました。ただ、あのころは災害、特に首都直下地震を想定して、これだけ東京に人が集まるというのは危険だということを申し上げたので、感染症までは思い浮かばなかった。今後、東京のあり方を考えていくうえで、私たちは感染症における密のリスクを十分に意識しておかなければいけない。

 今回の転出超過は、テレワークの普及が大きい。地方に住んでも、転職せずに仕事ができる。これがわかったことは大きい。コロナで働き方の変革を余儀なくされたことで、働く人たちがテレワークという「武器」を得た。密をかえる大きなきっかけになると言えるのではないか。

 ただ、これにも限界がある。このことは後にふれます。

 ――2016年の都知事選のとき、それまで「一極集中」を批判し是正策をとってきたことが、都政を担う立場としては矛盾するとも批判されました。都議選が告示されましたが、それでもやはり、ど真ん中の東京だからこそ争点とすべき問題でしょうか。

 5年前の当時は、日本経済の基調はバブル期と比べてだいぶ変わってきたとはいえ、まだまだ成長神話が信じられていた。リーマン・ショックのあと、早くまた成長軌道に戻りたい。そのためにも、東京はその中心であるべきだし、日本全体では人口減少に入ったけども、東京はずっと増えてきて集中度合いを強めていたわけです。それがひいては日本の発展につながっていく、みたいな話がまだまだ強く生き残っていた時代でした。

 でもそれは古くて危険な考え方です。

 いまどき人口を集めることで…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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