老舗の和菓子舗で代々大切に使われてきた和菓子木型を後世にどう残していくか。和菓子の伝統を支えてきた文化財を3Dスキャンでデータ化して保存するサービスを三重県四日市市の会社が始めた。
落雁(らくがん)や和三盆、練り切りあんのような上生菓子に使われる和菓子木型は、手彫りによる独自のものがほとんど。木型の彫り手と和菓子職人の技と感性で生み出された和菓子を看板にする和菓子舗も多い。100点以上の木型を保有する老舗もある。
だが、木製のため、使い込むうちに壊れたり欠けたりする恐れもある。水害で水につかったり地震で破損したりして、使えなくなる可能性もある。木型を彫る職人も減っており、代わりの木型も手に入りにくい。
「3Dスキャンによりデジタルデータとして残すことで、受け継いでいけるのでは」。こう考えたのは、自動車部品の古い金型や木型の3Dデータ化を手がけてきたハンチャンコーポレート(西日本事業所・四日市市)代表の半林(はんばやし)義之さん(58)だ。
将来は菓子職人の技も数値化して…挑戦は続く
自動車部品の金型は、海外に製造拠点を移しても、もとの金型を3Dデータ化して国内で保存し、技術の継承につなげていることにヒントを得た。
データベース化することに加え、コンピューター利用設計システム(CAD)のデータをつくっておけば、NC加工(数値制御による機械加工)で原物の風合いを反映した木型を再製作することもできる。非接触でスキャンするため、もとの木型を傷つけることはないという。
半林さんは「木型の品番ごとに人気や売れ行きのデータを一緒に管理すれば、事業継承のときにも役立つはず。NC加工は、木型の形のままサイズを変えられるので、ニーズに合わせて大きくしたり小さくしたりもできる」と話す。
4月にサービスを始め、全国の和菓子舗に案内を送ったところ、50件ほどの問い合わせがあったという。1件につき3Dデータ化で8万円から、3DCADデータで16万円から、と価格を設定している。
「将来は菓子職人の技を数値化して、3Dフードプリンターを使った和菓子づくりにも挑戦したい」と、半林さんは話している。(鈴木裕)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル