電車で通学や通勤をする女性を狙った痴漢が横行する一方、被害を警察に相談する人は少ない。被害者はどんな傷を負うのか。何が被害者の声を封じるのか。痴漢や盗撮の被害者支援に取り組む岸本学弁護士に話を聞いた。
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痴漢や盗撮の被害者支援を専門としています。被害者にかわって警察に被害を申告したり、加害者側と示談の交渉をしたりします。
被害者にこそ弁護士のサポートが必要なのに、あまり前例がなかった。理由のひとつに、被害者と加害者の経済的格差があります。
加害者は成人男性が多く、被害者になりやすいのは学生などの若い女性。弁護士を雇う財力にも差が出ます。日本弁護士連合会の援助制度があるのですが、あまり知られていません。
多いのは「どうしたらいいかわからない」という相談。警察から「加害者側弁護士にあなたの連絡先を教えていいか」と聞かれたけど教えていいのか、示談に応じていいのか……。警察への被害相談から一緒にやることもあります。
捜査への協力も、被害者には大きな負担です。どんな風に触られたのかを再現させられた被害者もいます。被害から申告まで時間を要した被害者に「その間、平気だったんじゃないの」と言った警察官もいたと聞きます。捜査機関の態度や言葉遣いに傷つき、刑事手続きを諦めざるを得ない人もいる。親身になってくれる人もいるので、ばらつきがあるのが現状です。
「被害者たたき」が多いから、被害者は声を上げにくい。ひとつは被害を軽視する「大したことない」「気にしすぎ」という批判。実際には被害者の傷はとても深い。気にせずに済むならどれだけいいかと思います。
もうひとつは、被害者を「あなたが悪い」と批判するものです。これを恐れて、親に被害を打ち明けられなかった未成年の被害者がいました。
なぜこういうことが起きるのか。被害者が声を上げたとしても、それを聞いた人は犯人を捕まえることはできないし、特に男性は自分が責められたような気持ちになることがある。だから被害者に責任を押しつけた方が楽なのかも知れません。
「冤罪(えんざい)だったらどうしよう」という恐れも、声を上げにくくさせます。メディアが大きく取り上げたこともあって、痴漢と冤罪は結びつけられやすい。でも、それが被害者が黙っていなければいけない理由にはなりません。
「触られたって減るもんじゃない」と言う人がいますが、触られて終わり、ではない。被害者の中には電車に乗れなくなって、学校や仕事を辞める人がいる。不眠や過食に悩んだり、対人関係に支障が出たりと、精神的な症状が続く人もいる。中長期的な影響があるのに、この点が理解されないから被害が軽く受け止められていると思います。
今、被害に苦しんでいる人へ。声を上げられない自分を責めないでください。自分より体格も体力も上の、えたいの知れない存在に触られたら声を上げられない方が普通です。誰か相談できる人が見つかれば幸いだと思います。親に相談できなければ、友達でもいいです。でも、何もできなくても、自分をどうか責めないでください。(聞き手・土屋香乃子)
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1973年、大阪府生まれ。みせばや総合法律事務所代表(第一東京弁護士会)。性犯罪被害者の無料相談などにも取り組む(https://misebaya-law.net/chikanhigaisha.html
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記事の後半では、被害実態や被害者の声を可視化し、警察や鉄道会社に対策を取るように働きかけている学生たちに話を聞きました。
「『仕方ない』で終わらせる…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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