外国人住民投票権 否決の武蔵野案と同じ条例、すでにある自治体では

住民投票条例案を審議する武蔵野市議会=2021年12月21日、東京都武蔵野市、高橋淳撮影

 外国人に日本人と同じ条件で住民投票権を認める東京都武蔵野市の条例案が21日、市議会で否決された。賛否が分かれ注目を集めたが、大阪府豊中市は12年前に同様の条例を施行している。自治体ごとに異なる判断を通して、外国人の住民投票権を考える。(玉置太郎)

武蔵野市の住民投票条例案

 武蔵野市が11月、市議会に提案。投票資格者を「18歳以上で、住民基本台帳に3カ月以上続けて登録されている者」とし、外国籍住民も含めた。投票結果に拘束力はなく、「市は結果を尊重する」と定める。市が3月に実施した市民アンケートでは、外国籍住民を含めることに73%が賛成したが、条例案の公表後に署名やデモなどの反対運動が起こった。今月21日の市議会で、反対14票、賛成11票で否決された。

条例できた大阪・豊中、元市長「国籍で区別、必要ない」

 豊中市の「市民投票条例」は2009年施行。武蔵野市の案と同じく、18歳以上の住民のうち、市内に3カ月以上住む人に国籍を問わず投票権を認める内容で、留学生や技能実習生も含まれる。

大阪府豊中市役所

 豊中市が条例の検討を始めたのは07年。当初、市の素案では、より厳しい「3年を超えて日本に在留」という投票資格の要件を考えていた。

 しかし、市民への意見募集で「短期間で日本の生活になじみ、知識を身につける人もいる」との声が寄せられたことなどから、市は日本国籍者と区別しない条文に変更。08年3月の市議会に提案した。

 市議からは国籍要件についての意見はなく、原案のまま可決された。

 06~18年に市長を務めた浅利敬一郎さん(76)は「地域の課題を問う時に、国籍で住民を区別する必要はないと考えた。市民の多くも同じ意見だったから、スムーズに議論が進んだのだろう」とふり返る。

浅利敬一郎・元大阪府豊中市長

 豊中市は住民のうち1・5%(約6千人)が外国籍。条例制定時からほぼ変わっていない。外国人市民会議や多言語の相談窓口も設ける、多文化共生の先進地だ。

 これまでに、条例に基づく住民投票が行われたことはない。それでも、市内に10年以上住むオーストラリア国籍の女性(41)は「日本人と同じ住民として声を聞いてもらえる投票制度があることは、すごく安心だし、うれしい。普段の生活では『外国人』として、日本人とは別の扱いを受けることが多いから」と話す。

「日本在留3年」要件でも否決、兵庫・明石

 武蔵野市の案と比べて、より資格要件の厳しい兵庫県明石市の条例案も、15年に市議会で否決された。「3年を超えて日本に在留」する外国籍住民に投票権を認める案だった。

 明石市は13年、学識者や市民ら10人でつくる検討委員会を設置。外国籍住民の投票権については、「地域で生活する住民の一人であり、認めるべきだ」という意見が大半を占めた。

 市は検討委の答申通り、条例案の資格要件に永住者・特別永住者か「日本在留3年」、という要件を採用し、議会に提出した。

兵庫県明石市役所

 しかし、条例案の公表後、市には抗議の電話とメールが数十件以上届いたという。

 議会でも複数の市議から「外…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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