多業態との連携模索 「行ける所」から「行きたい所」へ

内科医・旅行医 伊藤玲哉さん

 医療の世界は治療・治癒が最優先です。その価値観の中で、患者さんが「旅行したい」と漏らすことすらはばかられるのが実情です。大学病院でそれを何度も目の当たりにし「望めばいつでも患者が旅行できる体制を作る。これが医療界での自分の役割だ」と考えました。日本国内に医師の数はざっと30万人といいます。一人くらい、旅行専門の医師がいてもいいではありませんか。

 契機は腎臓がんが全身に転移した50代男性の最期の帰宅に同行したことでした。食事はほぼ食べられず、余命は長くて数週間。東京の病院から茨城の自宅に戻るなら今しかないというタイミングでした。そして、帰路に「家族とスカイツリーに上りたい」といいます。

 元自衛隊員で元来が寡黙な人でした。ストレッチャーに寝たままエレベーターで上がる間も無言で表情を変えず「本当に上りたいのかな」と感じつつ展望階へ着きました。

 快晴で東京の街が一望できま…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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