夫婦の姓を同じにしなければ結婚できない今の制度について、最高裁大法廷は2015年に続いて再び、憲法に違反しないと判断した。決定は「制度のあり方を考えるのは国会だ」としてボールを国会側に投げた。決めるのは国会か、それとも司法か。ボールはどこにあるのか。
元厚生労働相・舛添要一さん「やっぱり選挙 野党は公約掲げて争点化を」
――選択的夫婦別姓をめぐる司法の合憲判断は、国会や行政にはどんな影響を与えるでしょうか。厚労相時代に薬害C型肝炎訴訟の和解合意などに携わった立場から、どうみえますか。
「C型肝炎訴訟は、大阪高裁の和解勧告により救済法の成立に至りました。また、同じく私が厚労相だった時には、国が敗訴を重ね、最終的に国が原告の『全員救済』に踏み切った原爆症認定集団訴訟もありました。これら二つについては司法の判断は大きかったといえます」
「二つの訴訟では、司法が証拠をよく研究して科学的なデータをもとに判断を下しています。これに対して、国会も行政も司法が間違っているとはなかなか言えません。肝炎の賠償額にしても、原爆症の認定範囲にしてもまず裁判所が土俵をつくり、被告である国側と原告ですりあわせていった。司法が調整役を担っていたのです」
「ただ、今回は、私が担当した訴訟とは違います。科学的なデータはありませんし、求められているのは基本的な仕組みづくりですから」
――どういうことでしょう。
「たとえば、選択的夫婦別姓を導入すれば、姓の違う夫婦のもとで育つ子どもに悪影響を与えるという指摘がありますが、実際に影響があるのかも含めて検討し、それを防ぐための仕組みづくりまで司法がやるのでしょうか。こうしたことは、唯一の立法機関である国会がやるべきことでしょう」
――司法の判断を待っているのではなく、国会が動くべきケースだということですか。
「2017年に内閣府が行った世論調査では、選択的な夫婦別姓を導入してもよいと答えた人が半数近くを占めました。世の中の流れは変わっており、国際的に見ても、夫婦同姓制を採用しているのは日本だけだと上川陽子法相が明らかにしています。国がつくった制度で不利益を被ることがあるのなら、制度を改めなければなりません」
「それに、今回の判断は国会に対する『最後通告』のような形で出されたと私は感じました。違憲とした判事は、国会で選択的夫婦別姓の具体的な検討をしてこなかったと批判しています。合憲とした判事も、同姓制で不利益を被る人がいることは認め、『立法機関である国会が不断に目を配り、対応すべきだ』としている。国会の怠慢という点では一致しています」
――13年の違憲判決を受けて法改正された婚外子の相続差別訴訟などがそうですが、国会は司法が違憲と判断するまで動かない印象があります。
「婚外子の差別問題では、選挙で票にならないという意識が長く、国会議員の側にあったのでしょう。問題が注目されておらず、当事者も少ない段階では、国会で取り上げても当選できるほどの票の獲得は期待できません。全国各地で裁判が起こされ、メディアも報道し、違憲判断が出て、となってようやく動くものです」
司法からボールが投げられ、別姓に前向きな政党もあるのにどうして国会は動かないのか。記事後半で、舛添さんは自民党内に流れる空気感を理由に挙げます。また、元最高裁判事の櫻井龍子さんは、今回は司法から国会へのボールの投げ方が違ったと指摘します。そして、あと数年すれば「違う判断が出るはずです」と語ります。
「そうですね。それでも議論…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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