聞き手・江畠俊彦
物理を語る。あるときは、つなぎを着て夜のクラブで。またあるときは、オンラインの生中継にて24時間ぶっ続けで。こんな仕立てのイベントを開いているのが物理学者の小林晋平さんだ。学びの楽しさを一緒に味わいたいという。専門は宇宙の始まりを解明すること。物理で何を学び、何を伝えたいのか、語ってもらった。
研究室みんな「丸小技研工業」
いま着ているのは研究室のTシャツと、「丸小(まるこ)技研工業」と刺繡(ししゅう)を入れたつなぎです。丸に小林の小。ものづくり集団という設定です。8月にも開いた科学イベント「夜学」では、これを研究室の学生も着て登場しました。物理学を中心とした、さまざまな学問をクラブ仕立ての空間で体験する催しです。
クラブは好きですが、大学院生の頃は時間がなかった。それならと研究道具を持って行き、大音量の店内で計算なんかをしていました。音楽に囲まれ、夜独特の雰囲気も重なる高揚感は、新しいことを発見するわくわく感に通じます。学びは本来楽しいもの。それを伝え、一緒に面白がりたい。
新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した2020年3月にはオンラインの生中継で「24時間ではしりぬける物理」を配信。24時間ぶっ続けで物理の授業をしたのです。学びをお祭りみたいにしたと言えばいいでしょうか。
次は「日本列島かけぬける物理」という企画を実現できればと考えています。ある場所で対面の授業をして、同時にオンラインで全国配信。次は違う場所で授業。私が全国を移動して、学びの楽しさを配っていきます。授業を受けた生徒は何を感じたのか、その場でチャットに書き込む。リアルタイムの感想を記録した研究はほとんどないそうです。「面白い研究になる」と言われました。一緒に楽しんで学ぶ方法は、いろいろあるのです。
人に何かを伝えようと工夫すると、自分も理解が深まります。私が物理学に加えて教育の実践的な研究にも取り組んでいる理由の一つです。「科学を理解している人」はもちろん、「科学に理解がある人」をいかに増やせるか。さまざまなことを享受できる力を育み、学びの裾野を広げたい。
私自身は小さい頃から漫画「…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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