夜の校舎、4カ月半ぶりの明かり 夜間中学で笑顔と別れ

 北九州市小倉南区の「自主夜間中学」の教室に16日夜、4カ月半ぶりに明かりがともった。新型コロナウイルスの感染を警戒して2月末に閉じられていた。マスク姿の生徒たちが再会を喜び合った。

 この日再開したのは城南中学校「夜間学級」だ。午後7時前に登校してきた70代~80代の7人は「久しぶり」と声をかけ合い、自席に向かった。

 生徒やスタッフには高齢者が多い。感染しては大変だ。授業前、検温や消毒をする。授業も通常の2時間から1時間に縮めた。20人前後の生徒(30代~80代)を居住地区で分け、登校日をたがえた。

 「休んでいる間、こんな出来事がわが家であったよ、というのを話して」。教壇から元中学校教員の竹中輝雄さん(64)が呼びかけた。社会の授業を担当している。いつもは気になるニュースを聞くことから始める。久しぶりの授業では一人ひとりに話してもらうことを優先した。

 「家でダンベルを上げて体操していた」

 「コロナで気分が落ち込んでいた」

 生徒たちがそれぞれ笑顔で答えた。小倉南区の松崎政義さん(73)は、竹中さんから毎月送られる手作りの学習帳を自宅で勉強していたという。漢字の読み書きや理科の問題が載っている。「ずっと勉強がしたかった。皆の顔を見られてうれしい」と話した。

 せっかく再開したのに別れもあった。スタッフとして2年間参加してきた八並美奈子さん(68)が辞めるという。「せっかく皆さんと仲良くなれたと思ったのに、今日で最後のお別れを言いに来ました」と生徒に告げた。佐賀県に住む父が4月に亡くなり、母の面倒を見るためという。「皆と一緒に学んできたという思いです」

 授業後、竹中さんは「皆と話ができたことが、何よりも楽しかった。こういう場所をなくさずに続けていきたい」と話した。

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 夜間中学は、戦争の混乱などで学校に通えなかった人のために作られ、現在は不登校の人や外国人が増えている。福岡県内には元教員らボランティアが運営する「自主夜間中学」が3校ある。福岡市の「よみかき教室」は8日に再開した。もう1校の穴生・中学校「夜間学級」(北九州市八幡西区)も再開に向け、準備を進めている。(板倉大地)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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