夏の夕暮れ。校庭の隅にある教室に西島保さん(72)が入ると、級友の女性が長机で先生と話しこんでいた。フィリピン出身の40代。いつもは人なつっこいのに、ティッシュで目元を押さえ、化粧が涙で流れ落ちている。「何かあったん?」
奈良県橿原(かしはら)市の畝傍(うねび)夜間中学。30人余りの生徒は年代も国籍もまちまちだ。西島さんが入学して間もない、2017年のことだ。
彼女が言うには、昼間働いている工場で日本人の上司から冷たくされるのだという。10代の2人の子を育てるために、夜はラウンジの仕事にも通う。そう話してはまた泣いた。「なんとかしてやりたいなあ」。娘のような世代の涙を見ながら、西島さんは19歳で出会ったあの人のことを思い浮かべた。
奈良県の貧しい家に生まれ、小…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル