10日に行われた天皇即位に伴うパレード「祝賀御列の儀」。社会学者の大澤真幸さん(61)が赤坂御所近くの青山通りで見た。なぜ約12万人もの人がパレードを見に来たのか。群衆に交じって道路に立ち、天皇支持の「空気」を読み解いてもらった。
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天皇、皇后両陛下のオープンカーが通過した時間はわずか、数十秒でしたね。「きゃあー」という悲鳴にも似た歓声が一部で聞こえました。
日本国憲法で「象徴」と位置づけられた天皇は政治的には無力な存在。でも、即位礼正殿の儀で、高御座(たかみくら)の幕が開いて姿を見せたように、神秘的な存在として世に伝えられてきた。その天皇陛下が目の前に現れ、感極まったのでしょう。ただ、多くの人は静かにスマホを掲げて撮影していた。天皇の神秘性は演出されたものだという冷めた感覚は今や多くの人が持つものだと思います。
平成のパレードでは、爆竹騒ぎなどの事件がありました。当時は、天皇制を打倒して共和制に移行したいという主張が社会の中にありましたが、今回はそうした「異論」が影を潜めた。警備は物々しかったが、天皇が狙われるかもしれないという緊張感は警察官から伝わってこなかった。
車列を待っているとき、警察官が我々群衆に「練習をしておきましょうか」と笑顔で呼びかけ、拍手を一斉にさせたり、国旗を振る練習をさせたりしました。別の群衆からの拍手が聞こえてくると、警官が「負けないで!」と声をかけ、どっと笑いが起きた。近くの女性が「東京ディズニーランドのキャストみたい」と感想をもらしていました。
たしかに、現場には、深い尊崇…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル