大阪府、模索続く「出口戦略」 コロナ感染再拡大

 大阪府は15日、新型コロナウイルス対策の緩和基準を検討する「出口戦略」会議の第2回会合を開き、感染症や経済学の専門家を交えて議論した。対策の出口を示すことを評価する声が上がる一方、府が示した「ロードマップ」の試案には意見が相次いだ。この日の大阪の新規感染者は324人。感染が再拡大するなか、出口戦略をめぐる模索が続いている。

 府は先月30日に開かれた第1回会合で公表した試案の修正版を提示した。前回の会議で示された試案は、ワクチンの接種を終えた府民の人数と、府が確保する重症病床の使用数に応じ、レベル1~4を設定。レベルごとに営業時間の短縮要請などの対策を定めた。

 ただ、重症病床に限定すべきではないとの声もあったことから、修正版では、軽症・中等症も含めて府が確保する病床全体の使用数も目安に盛り込んだ。

 ワクチンの接種人数に応じて対策を緩和する方法について、行動経済学が専門の大阪大・大竹文雄特任教授は「接種をしていない人へのプレッシャーが強くなり、社会の分断を生む」と主張。「接種によるインセンティブ(報奨)を強める仕組み」を提案した。

 大阪大院の忽那賢志(くつなさとし)教授(感染制御学)は、「新しい感染症で変異株という不確定要素がある。世界中でよくわかっていない。(基準を)柔軟に変更するつもりで設定する必要がある」と話した。

 一方、府の専門家会議の朝野(ともの)和典座長は「個人への有効性はあるが、変異株の出現や社会構造によって集団免疫の達成が可能かどうかは不明。ワクチンのみで評価するのはエビデンスに乏しく、ワクチンだけで社会が変わるとの誤解を生む可能性がある」と指摘した。

 府は専門家の意見を踏まえ、7月末にはロードマップを完成させる方針。京都大の古瀬祐気特定准教授(感染症学)は「ワクチン接種が進んだときに行動を制御する対策を弱くしていくことは可能だ」とし、ロードマップを評価する一方、「今は明らかに感染が拡大しているので、この夏の波はワクチンだけで制御するのは難しい。接触機会を落とす必要がある。接種が進んだ秋以降をめざしていくのがいい」との見通しを示した。(寺尾佳恵)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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