土砂崩れや河川の氾濫(はんらん)など大雨による災害が迫る時、いつ、どこに、どういう情報を出すべきか、各地の自治体が頭を悩ませている。7月上旬に九州南部を襲った豪雨で、市内全域に避難指示を発令した鹿児島市では、一部で避難所が足りなくなる一方、誰も来ない避難所もあった。
今月3日、7月の1カ月分の雨が降った鹿児島市。原田薩男さん(74)は妻ら家族6人で避難先に指定された看護専門学校に身を寄せた。避難指示が出たと繰り返し報道され、東京に住む娘から「避難せず被害に遭えば周囲の迷惑になる」と促されたという。原田さんは「何も起きずよかった」と胸をなで下ろした。
近くの女性も子ども2人を連れ、同じ避難先に行こうと市のホームページを見て驚いた。「避難者がいっぱいのため避難が難しい状況です」。想定収容人数106人に対し、136人が集まっていた。女性は結局、自宅にとどまった。
市は7月2日朝までに市内全域の59万人に避難勧告を出し、3日朝、緊急の避難を求める避難指示に切り替えた。1日には土砂崩れで70代の女性が1人亡くなっていた。危機管理課の中(あたり)豊司課長は全域に避難指示を出した理由を「土砂災害の危険性が全域で高まっていた」と説明。水を含むと崩れやすい火山性のシラス台地近くに住宅が多く、土砂災害警戒区域は3267カ所に及ぶ。さらに市街地のある平野部の広い範囲は洪水浸水想定区域だという事情もあった。
しかし、指定避難所への避難者はピーク時でも約3千人で、市民の1%未満。避難所187カ所のうち約20カ所は一人も来なかった。中課長は「避難所への移動だけが避難ではなく、(マンションの上階など)安全な場所に自宅があれば、そこにとどまることも避難」と話した。(竹野内崇宏)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル