玄関を開けると、臭う。
「またか」。舌打ちしながら狭い庭で臭いの元を探す。あった。植木の根元の草陰に。ノラ猫のフンだ。
二重にしたポリ袋でつかみ取り、そこを水で洗い流し臭いを消す。名古屋市内のこの家に住み始めて10年、毎日のように繰り返してきた。
ノラ猫は、「わが家」の天敵だ。猫よけの臭い砂や液体、プラスチックのトゲトゲ、猫が嫌う音の発信装置……。あらゆるもので庭の守りをかためてみたが、どれも効果は続かない。
ご近所さんには猫好きもいて、隣の駐車場でエサをやっているようだ。だからノラが集まってくるんだ、と腹立たしくも感じていた。町内は、猫好きのエサやりさんと、わが家を含めフン尿被害に悩む住民との間に微妙な緊張感が漂う。
ノラ猫にどう対応したらいいのか、ずーっと頭を悩ませてきた。
8月末、「地域猫セミナー 野良猫の現実と問題点」と題した講演会が市内であると知り、夫婦で出かけた。「地域猫」とは初耳だが、有効な対策があるなら知りたい。助けを求めるような気持ちだった。
ノラ猫についての相談や苦情は、名古屋市だけでも年約8千~1万件に上る。2014年の市政アンケートで回答者の5割以上が「フン尿」「鳴き声」「ゴミ荒らし」に悩んでいると答えた。長い間、悩まされてきた私と妻が「地域猫」という活動を知り、取り組んだ体験を4回に分けて報告します。
講師は、東京の練馬区職員石森信雄さん。ノラ猫対策の元担当者で長い間、現場で携わってきたという。
話は衝撃だった。「エサやり自…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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