岩手県水産技術センターは31日、今年度の県内沿岸への秋サケ回帰予報を発表した。重量と匹数は、それぞれ東日本大震災前5年間の平均値の約1%まで落ち込むと予測する。
発表によると、予測される重量は前年度実績の約67%の298トン、匹数も同59%の10万匹。前年度のサケの回帰率を年齢別に調べ、最も回帰する4歳魚は1年前の3歳魚の回帰率を参考にするなどした。いずれも稚魚放流が本格化する前の1960年代並みという。
同センターによると、岩手県のサケの資源保護は江戸時代から始まり、明治時代には人工孵化(ふか)場が設けられた。昭和中・後期からはそれぞれの漁協が稚魚の放流数を急増させ、震災前までは4億匹に及んだ。
しかし、最近は水温や海流の変化などで回帰するサケが激減。今秋回帰してくる4歳魚は、稚魚として放流した時期の水温が特に高く、成長に適した水温期間も短かったため、生存率が低いとみている。この傾向は数年続くという。
同センターでは、生存率を高めるため、昨年度から稚魚を大きくさせたり、速い流れにも進んでいけるトレーニングをしたりして「強靱(きょうじん)化」に取り組んでおり、研究員は「2025年度ごろから成果が出るのでは」と期待している。
一方、県内のサケ・マス類の海面養殖事業は、毎年拡大している。現時点で養殖している沿岸5カ所の地元自治体や漁協に朝日新聞社が取材したところ、今年の養殖の水揚げ量は7月末現在で計約1800トンと過去最高を記録。各漁協や水産会社はさらに増産を予定する。天然サケが減り、養殖サケが増える状況は、今後も続きそうだ。(東野真和)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル