天皇陛下は初めて臨んだ全国戦没者追悼式の式典で、抑揚を抑えた口調でお言葉を読み上げ、時折、手元の原稿から目を上げ標柱を仰ぎ見られた。続く戦没者遺族代表の式辞の際は、右前方の遺族代表の方へ顔を向けたまま、じっと聞き入られた。お言葉では昨年までの上皇さまの内容をほぼ踏襲し、令和の時代でも平和が続くことを願われた。
上皇さまは平成元年の追悼式で、それまでの昭和天皇のお言葉に「国民のたゆみない努力によって築きあげられた今日の平和と繁栄」との一文を加えられた。節目の年となる戦後50年の7年には「歴史を顧み、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い」、戦後70年の27年には「深い反省」と、さらに新たな言葉も加えられてきた。
陛下は今回、上皇さまのお言葉を、おおむねそのまま用いた一方で「往時をしのぶとき」の部分を「国民の歩みを思うとき」と変更された。式典会場には戦没者の玄孫(やしゃご)ら戦後世代が増える中、同じく混乱期を知らない世代としての思いを平易な言葉で伝えられた。また「深い反省とともに」との言葉は「深い反省の上に立って」と変えられた。ある宮内庁幹部は「上皇さまが平和を希求されてきた思いはそのままに、未来志向に立ち、戦争を知らない次世代、さらにその次世代にも先の大戦を語り継いでいかなければならない、というご意向の表れ」と受け止めたという。
陛下は今夏、例年は約1週間とる静岡県下田市でのご静養を早めに切り上げ、広島の原爆の日の前日に当たる今月5日に帰京された。側近によると、原爆の日に静養先ではなく、お住まいの赤坂御所で黙祷(もくとう)されるためだった。「真摯(しんし)な姿勢で先の大戦と向き合われている。今後も慰霊を重ねてさらに考えを深め、その思いをお言葉に込められていくだろう」。側近はそう話した。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース