5月28日、凛(りん)さんは生活用品店でルームウェアを選んでいた。
会社員として働きながら、未就学の男女2人の子どもを育てている。
夫の不倫が原因で、双方が弁護士を立てて離婚協議中だった。
1歩進んで2歩下がるような状況が2年ほど続いており、夏前には離婚を成立させたいと思っていた。
どのルームウェアにするか悩んでいたら、70歳くらいの女性から声をかけられた。
「タグの字が小さくて……読んでくれませんか?」
黒のワンピース姿で、靴とバッグは花柄模様。
統一感のあるおしゃれな雰囲気で、歌手の中尾ミエさんのようだった。夫へのプレゼントを探しているという。
凛さんがアドバイスすることになった。
「もうすぐ夏だから、こっちの生地が肌触りがいいかも」「こっちの色が涼しく見えそうですね」
そんなやりとりをしながら、一緒にあれこれ手に取った。
女性が選んだのは、ワッフル生地と、インド綿のハーフパンツ2着。
インド綿の方は、凛さんが勧めたものだった。
商品を手にレジに向かう途中、女性が、手にしていたショッピングバッグを差し出してきた。
「本当にうれしいの。どうか受け取って」
バッグの中に入っていたのは…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル