10月31日に行われた国民審査で、最高裁裁判官をやめさせるべきだとした「罷免(ひめん)票」は、夫婦別姓を認めない民法規定を合憲とした4人の裁判官に多く集まった。その傾向は都市部ほど強かった。選択的夫婦別姓の導入を求める市民団体がSNSで罷免を呼びかけたことなどが背景にあるとみられる。
国民審査はやめさせたい裁判官に×印を付け、有効票の半数を超えると解職される仕組み。今回対象となった11人のうち、罷免率が7%を超えたのは深山(みやま)卓也氏(67)、林道晴氏(64)、岡村和美氏(63)、長嶺安政氏(67)の4人で、罷免票数は約415万~449万票。いずれも6月の最高裁決定で夫婦同姓を「合憲」と判断していた。
人口500万人以上の9都道府県の結果を朝日新聞が集計したところ、4人の罷免率だけが8%を上回った。人口の多い都市部では4人の罷免率が高い傾向がうかがえ、東京都の結果に限ると4人とも10%を超えて、最も高かった林氏は11・70%だった。
裁判官ごとの罷免率の差、史上2番目の大きさ
罷免率の高い人と低い人の差も顕著だった。全国集計で罷免率が最も高い深山氏の7・85%に対し、最も低い安浪亮介氏(64)は5・97%。約1・88ポイント(約108万票)の差があり、戦後の審査で最も差が大きかった72年の3・75ポイントに次ぐ2番目だった。72年審査では、沖縄返還をめぐる外交官時代の保守的な発言が問題になった下田武三氏の罷免運動が起き、下田氏の罷免率は史上最も高い15・17%になった。
今回の傾向について、「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の事務局長を務める井田奈穂さん(46)は「6月の合憲判断を受けて『私たちの手で司法を変えよう』と4人の罷免を求める声がツイッターなどで広まった。その結果ではないか」と指摘。「裁判官は審査の結果にハッと思い、自らの仕事ぶりを振り返ってほしい。少数者の権利を守る存在であってほしい」と求めた。(阿部峻介)
【裁判官11人の罷免率(有効票に占める×印の割合)】
名前/出身 ①全体での罷免率 ②9都道府県での罷免率 ③東京都での罷免率
●深山卓也(67)/裁判官出身 ①7.85% ②9.03% ③11.68%
岡正晶(65)/弁護士出身 ①6.24% ②7.04% ③8.63%
宇賀克也(66)/学者出身 ①6.88% ②7.70% ③9.08%
堺徹(63)/検察官出身 ①6.24% ②6.99% ③8.51%
●林道晴(64)/裁判官出身 ①7.72% ②8.93% ③11.70%
●岡村和美(63)/行政官出身 ①7.29% ②8.42% ③10.99%
三浦守(65)/検察官出身 ①6.71% ②7.52% ③9.02%
草野耕一(66)/弁護士出身 ①6.73% ②7.58% ③9.19%
渡辺恵理子(62)/弁護士出身 ①6.11% ②6.87% ③8.31%
安浪亮介(64)/裁判官出身 ①5.97% ②6.74% ③8.31%
●長嶺安政(67)/行政官出身 ①7.27% ②8.43% ③11.02%
※告示順、敬称略。名前の前に●がある4人は夫婦同姓を「合憲」とした裁判官
※9都道府県は人口500万人以上の自治体(北海道、埼玉、東京、千葉、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment