2020年6月、なりたりえさんは夫とけんかをした。
きっかけは、お互いに思い出せないくらい些細(ささい)なこと。
そこから日頃の不満や昔話に飛び火し、口論になった。
互いの主張が平行線をたどり、うんざりしてきたころに、ふとこう思った。
「お皿を割って終わりにしよう」
なぜそう思ったのか、理由はわからない。
近くにあった皿を手に取り、夫に当たらないよう気をつけながら投げつけた。
行動しながら「いま私、ドラマみたいにお皿投げてる」と冷静に見ている自分がいた。
「ガチャーン」
皿が割れる音を聞いて、2人とも我に返った。
一緒に破片を片付けながら、「どちらも悪いところがあったね」と謝りあい、翌朝には笑い話に。
夫は「結婚8年で割れたのが皿1枚ならいいんじゃない?」と言ってくれた。
◇
4カ月ほど経ったころ、リビングでくつろいでいたら当時3歳だった次女が聞いてきた。
「なんでママはあの時、牛のお皿を割ったの?」
割った皿はアイスの景品でもらったもので、牛が描かれていた。
姉妹2人のお気に入りで、おやつを食べるときなどに使っていたものだった。
あの日は子どもたちもいる前でけんかをしていて、皿を割ったことも謝っていた。
「突然、つらい思い出としてフラッシュバックしたのかも」
申し訳なく思いながら、答えに窮していると、とっさに夫がこう言った。
「あの牛さんが描かれたお皿…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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