失業者らに郊外の空室紹介 「新たな貧困ビジネス」か、相談相次ぐ

 生活困窮者の支援を掲げる一般社団法人に賃貸物件を紹介された首都圏の失業者らが「都心から離れた場所で、約束した就労支援も受けられなかった」などとして、支援団体に相談する事例が相次いでいる。元入居者が近く、社団法人などに損害賠償を求める訴訟を起こす。支援する弁護士らは、困窮者で空室を埋めて物件を転売する「新たな貧困ビジネス」が背景にあるとみている。社団法人側は取材の申し込みに対し、「対応できない」としている。

 登記情報によると、社団法人は東京都新宿区にあり、2020年10月、困窮者や高齢者、障害者らの住居確保や就労支援を目的に設立された。ホームページには、住まいの紹介や生活保護の相談などを掲げている。

 東京・池袋でホームレス状態の人たちを支援するNPO法人「TENOHASI(てのはし)」、貧困問題に取り組む市民団体「反貧困ネットワーク」(東京)などには21年以降、社団法人が紹介した物件に入居した20~70代の困窮者から、約30件の相談が寄せられている。

 てのはしによると、入居先の大半は東京の多摩地域や近県の賃貸物件。都心から電車で1時間ほど離れた場所にあることが多い。生活保護を受給しながら仕事を探しても徒歩圏内に働く場が少なく、生活再建ができないなどと訴えているという。

 スマホで日雇いの求人を見つけても、郊外では当日や翌日の早朝といった急な募集に対応するのは難しい。てのはしの清野賢司代表理事は「縁もゆかりもない郊外では自立につながりにくい」と話す。

実際に入居した男性や物件の購入者らに話を聞きました

 提訴する男性(62)は22年6月、東京都福生市の賃貸物件を紹介された。弁護団によると、コロナ禍による人員整理で失業し、ホームレス状態になった。ホームページで見つけた社団法人と、就労支援が得られる有償の「生活再建サービス」の契約も結んだが、求職情報の提供などはなかったとしている。

 部屋の設備が修繕されなかったことから、男性が家賃の支払いを留保すると外付けの鍵が付けられ、追い出されたという。

 男性は就労支援が受けられず、追い出し行為で精神的苦痛を被ったなどとして、社団法人と家主だった東京都品川区の不動産会社に対し、約200万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こす考えだ。

「破格」の満室賃貸物件、購入すると…

 困窮者らで空室を埋めて賃貸物件を高く転売しようとしているのではないか――。そう疑う法律家やNPO法人などが今年1月、支援団体「住宅穴埋め屋対策会議」を結成した。社団法人と、物件を持つ首都圏の複数の不動産業者などに関わりがあるともみている。

 実例の一つとして挙げるのが…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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