居間の床に敷いたシート上に鳥の手羽先、イワシのトマト煮、ゆでキャベツ、厚揚げが並んだ。
6月中旬の午後8時すぎ、神奈川県内の一軒家の一室。ここに住む5人のベトナム人が肩を寄せ合った。「一日の最後の楽しみ」という発泡酒を冷蔵庫から取り出した男性は、「食事以外はお金を使わない。今日は少しおかずが多いね」と笑った。
5人は型枠工事の会社で週6日働く。夏の現場は暑さによる食欲の減退と節約のため、昼食をとらずに働くことも多い。夕食時だけが「ゆっくりできる時間」だという。
困窮する食卓
止まらない格差拡大に、コロナ禍と物価高が追い打ちをかけている。「食べるものがない」「食事を減らしている」。参院選で経済対策が争点となる中、生活に苦しむ人々の「食」の現場から、日本の貧困の現実を見つめた。
一軒家は会社の寮で、家賃は1人あたり月3万円。光熱費も別に必要だ。1カ月の食費は1人1万円で、肉や魚を食べるのは週に3回程度。全員、技能実習生として来日したが、3人は前の会社から逃げ出した「失踪者」だ。
34歳の「ファン」と名乗る男性は3年前に来日し、埼玉県内でとび職として働いていた。
日常的に同僚から繰り返しいじめを受けた。車で現場から帰る途中、リュックと水筒を投げ捨てられ、無理やり車から降ろされたこともあった。
それでも「我慢するしかない」と耐えていたが、給料が月18万円から12万円に減らされた昨年8月、「これでは生きていけない」と失踪を決めた。技能実習生は原則、勤務先を変更する自由がないためだ。
来日前にベトナムの送り出し…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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