1日に発生した能登半島地震では、全国有数の日本酒の生産地として知られる石川・奥能登の酒蔵も大打撃を受けた。酒造の生命線である水も止まるなど前途は多難だが、県内外の酒蔵会社が被災した蔵から「もろみ」(酒になる前段階の状態)を「救出」するなど支援に乗り出している。
1月17日早朝。石川県能登町にある数馬酒造の前に、タンクを積んだトラックが到着した。
やってきたのは、直線距離にして約360キロ離れた宮城県大崎市の新澤醸造店の新澤巖夫代表とその社員たち。
「交通の負担にならないように、深夜に運転を交代しながら移動してきた」と新澤代表。
タンク内にある約3トンの水を提供し、それと引き換えに蔵の2階にあったもろみ約1トン分をポンプで吸い上げた。そして、10時間かけて、宮城に戻った。
「皆さんのご協力に感謝しかありません」。数馬酒造の数馬嘉一郎代表はそう話す。
同酒造は、金沢国税局が開く酒類鑑評会で「優等賞」の常連だ。しかし1日の地震で、震度6弱の揺れに襲われた。
海沿いにある蔵の1階は、津波の影響で汚泥がたまり、地盤沈下で床が沈んだ箇所もある。木造建屋の壁などが破れ、酒造機器や瓶詰めした酒瓶の多数が破損。断水も続く。
酒造作業は不可能な状態だが、もろみを搾り、酒と酒かすに分ける「上槽」と呼ばれる仕上げの工程を待つばかりのもろみが数トン、残された。
このまま放置すれば腐るなど品質の劣化は避けられないし、そもそも上槽をしなければ商品にならない。
そこで助け舟を打診したのが新澤代表だった。数馬代表とは昨年7月、ロンドンであったインターナショナルワインチャレンジ日本酒部門の表彰式で出会い、親交があった。
自身も2011年の東日本大震災で被災した経験がある新澤代表。「まずは、人の命が何より大事。そこが確認されたら、蔵はやはり、残ったもろみが気になる。何をすればいいかと考え、行動した」と話す。
新澤代表がやってきた翌日の18日には、石川県内からも車多酒造(白山市)、加越(小松市)の関係者が訪れ、残りの数トンのもろみを回収した。
もろみが残された被災地の他の酒蔵でも、県内外の酒造会社が協力してもろみの回収が行われていた。
もろみは回収した蔵が清酒に絞り、瓶詰めまでして、奥能登の蔵に返す予定だ。
日本酒は、税務署によって酒…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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