川村さくら、斎藤徹 上野創、桑原紀彦
支払い義務を超えた奨学金の返済は無効――。日本学生支援機構が保証人に全額返済を求めたことについて、13日の札幌地裁判決は明確に否定し、原告側に安堵(あんど)が広がった。多くの学生が奨学金を利用するなか、保証人を立てて借り入れる仕組みの是非も問われている。
教え子が音信不通に
「法律に盛られていることを、裁判官がきちんと判断してくれた」。判決後の会見で、保証人だった元高校教諭の男性(75)=北海道小樽市=は安心した表情で語った。
工業高校の教え子から頼まれ、学びたいという思いを応援しようと引き受けた。男性もかつて日本学生支援機構の前身の日本育英会から奨学金を借り、高校、大学へ進み、教員の夢を実現した。
教え子は大学を出て就職したが、返済が滞るようになり、何度か会ったが、やがて姿をくらました。奨学金だけが残った。機構からは頻繁に電話やファクスで返済を求められた。消費者金融からしつこく借金の取り立てを受けているようなやりとりが続いた。冷たい言葉を浴びせられ、「これが困窮している学生を支える組織の人の言葉なのか」とがくぜんとした。8年間のやりとりの末、2019年5月、奨学金のあり方に一石を投じたいという思いで、札幌地裁に裁判を起こした。
男性は会見で「泣き寝入りせずに、おかしなことはおかしいと言うべきだと頑張ってきてよかった」と話し、こう結んだ。「奨学金は、将来を担う子どもたちを育てることが目的のはずだ。この判決を機に、機構にはその原点に立ち返ってほしい」
同様の訴訟は東京地裁でも係…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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