奥正光
2018年に自殺した女性弁護士の両親が、所属する弁護士事務所の代表から繰り返し性被害を受けたことが自殺の原因だったとして、事務所と当時代表だった清源(きよもと)善二郎・元弁護士に計約1億7千万円の損害賠償を求めた訴訟で、大分地裁(石村智裁判長)は21日、元弁護士らに計約1億3千万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
判決などによると、女性は13年に司法試験に合格し、14年に大分県中津市の清源法律事務所に入った。32歳だった18年8月、遺書を残して自宅アパートで自殺した。
原告側は、15年3月ごろから亡くなる直前まで、雇用主である元弁護士から意に反する性被害を受け、精神的に極度に追い詰められて自死したと主張。被告側は「恋愛関係にあった」などと反論していた。
「恋愛関係認める余地ない」
判決は、女性の友人らの証言や遺書の内容などを踏まえ、「元弁護士が自らの性的な欲求を満たすために女性との関係に及んだと評価されても致し方ない。恋愛関係に基づく性的関係であったと認める余地などない」と被告側の主張を否定。「(女性は)上司から性的被害を受け、退所を含め他に方途を見いだせない状況下で、自死を選択せざるを得なかった」と、性被害との因果関係も認めた。
原告側弁護団は「基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士による性的な加害行為。弁護士という職責の社会的な評価を著しく毀損(きそん)するもの」とコメント。女性の遺族は「娘は、私たち家族の夢であり、誇りであり、希望の存在でした。娘の人生を踏みにじった被告らには、娘に心から謝ってもらいたい」とのコメントを出した。
被告側の代理人弁護士は「意外な判決で驚いている。判決の詳細を検討したい」としている。
清源元弁護士は09年度に大分県弁護士会の会長を務めた。女性の自殺後、自ら弁護士登録を取り消したが、県弁護士会は20年9月、元弁護士の女性への行為を理由に事務所を業務停止6カ月の懲戒処分にした。事務所は日弁連に審査請求したが棄却され、東京高裁に棄却の取り消しを求めている。(奥正光)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル