妻子の棺の間に布団を敷いて眠った 地震の後、止まったままの時間

 会社員の角田(かくだ)貴仁さん(47)は毎日、妻子と同じ部屋で寝ていた。

 一人息子で小学3年生の啓徳(あきのり)さん(9)を毎晩、寝かしつけていた。

 「1人で寝られるから大丈夫だよ」

 忙しい角田さんを息子は気遣ってくれた。

 妻の裕美さん(43)も一緒に、家族3人で布団を並べる。眠る前、気持ちよさそうな息子の寝顔を見る。

 それが、当たり前の日々だった。能登半島地震で、その妻と息子を失った。

 葬儀までの約10日間。葬儀場に置かれた2人の棺(ひつぎ)と棺の間に布団を敷いて、川の字になって眠った。

 「2人は私の家族。家族は常に一緒でなきゃならない、と思って。そばを離れたくなかったんです」

 元日。金沢市内の自宅から石川県珠洲市の角田さんの実家に家族で帰省していた。

 昼過ぎ、家族で神社に行っておみくじを引き、「みんな金運がいいね」と笑い合った。

 金沢に帰る準備を始めていた夕方、地震が起きた。平屋建ての実家は倒壊。角田さんと両親は外に出られたが、妻と息子の姿が見えない。

 「裕美!」「啓徳!」

 名前を叫ぶと、それに応えるように、倒壊家屋の中から何かをたたく音がする。

 「パン、パン、パン」

 息子が居場所を教えようとしたのか、倒壊家屋の中でがれきをたたいていた。

 音がする方に近寄った。「伝…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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