妻殺害され22年、手元に置き続けた遺骨「もう少し、頑張らないと」

 22年間、手元に置いてきた遺骨を墓に納めた。高羽悟さん(65)は1999年、名古屋市西区の自宅で妻の奈美子さん(当時32)を殺害された。当時2歳で現場に居合わせた長男が独り立ちし、気持ちに区切りをつけたが、事件解決への思いに区切りはない。

 今月7日、名古屋市内で納骨式があった。長男の航平さん(24)も駆けつけた。

 息子の成長を近くで見守ってもらおうと、遺骨は実家の仏壇に置いていた。航平さんは昨春、大学を卒業して東京都内の広告関連会社に就職。2年前には、奈美子さんと仲が良かった高羽さんの父親の納骨をしていた。

 「高羽家の墓に入っても、これで寂しくないだろう」と心を決めた。

 事件の1カ月前、家族でディズニーランドに行った。奈美子さんの母親と同居するために分譲マンションも契約した。「人生で今が一番幸せな時かもしれない」。奈美子さんの言葉が今も胸に残る。

 事件後、家族の思い出を刻むはずだったマイホームを解約。一緒に行こうと話していた近くの大型商業施設は今春閉店した。

 手がかりが残っているかもしれないという望みから、現場となったアパートを借り続け、払った家賃は2千万円を超えた。

 仏壇に手を合わせると、「一人になったんだな」と寂しさが募る。

 ただ、広島県福山市で20年前に主婦が自宅で殺害された事件では、先月、容疑者が逮捕された。

 もう少し、がんばらないと――。そう思い直している。

     ◇

 高羽さんは命日の13日、事件現場近くの商業施設で情報提供を呼びかけるチラシが入ったマスクを配った。

 この事件では、解決につながる有力情報の提供者に「捜査特別報奨金」(最大300万円)が支払われる。10月末までにのべ622件の情報が寄せられた。

 愛知県警の捜査員も遺族と思いは同じだ。事件当時、捜査1課にいた捜査員は「小さいお子さんがいて、気がかりだった。優秀な捜査員が集まる班が投入されたんだが……」。別の捜査員も「犯人の血痕も足跡もあり、すぐにつかまると思っていた。早く解決してほしい」と思いを口にする。情報提供は西署(052・531・0110)へ。(藤牧幸一)

 〈名古屋市西区の主婦殺害事件〉 1999年11月13日午後2時半ごろ、高羽奈美子さんが自宅で首を刃物で刺され、亡くなっているのが見つかった。玄関に残された血痕のDNA型鑑定などから、犯人は血液型B型の女で、靴のサイズは24センチと判明。現場近くでは、手から血を流した中年の女が目撃されている。

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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