榊原織和
お供え物を取りに来た子どもに水を浴びせて福の神の使者の来訪を祝う正月の伝統行事「とろへい」が7日夜、島根県飯南町頓原の張戸(はりど)集落であった。
とろへいは1年の最初の満月の夜に福の神が来て祝福を与えるという民俗信仰に基づく。かつては飯南町の各地で行われていたが、今では張戸集落のみ。幾度か途絶えるたびに住民が復活させてきた。なぜ「とろへい」という名なのかは分からないというが、中国地方の山間部に伝わる行事で、鳥取県日野町で「ほとほと」と呼ばれて行われていた。
参加したのは地元の小学校3年から高校1年までの11人。二手に分かれ、それぞれ4、5戸の家を回った。自分たちが来たことを知らせるため、「とろとろ、とろとろ」と大きな声を出して歩き、家の縁側にわらで作った馬の置物を置いて隠れる。住人はわら馬の近くにお供え物を置いて家の中に戻り、子どもたちがお供え物を取っていこうとすると水をかける。水にぬれた子どもは1年間、無病息災であるとされる。
子どもたちはぬれてもいいように、スキーウェア姿。住人がひしゃくやバケツで豪快に水をかけると、子どもたちは歓声を上げて逃げた。子どもたちを迎えた深石好美さん(68)は、「私が幼いときからやっていた行事。子どもは少なくなったが続けてほしい」。
家々を回った子どもたちは髪の毛がぬれるほど水をかぶった子も。初めて参加した頓原小3年の米原夕莉(ゆうり)さんは「水をかけられて楽しかった」。同小6年の景山果歩さんは「昔から伝わる伝統ですごくおもしろい」と話した。(榊原織和)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル