「貧困」という言葉を冠する日本初、そして唯一の法律、「子どもの貧困対策法」が成立して今年、10年になります。長年、貧困や格差の問題を研究してきた東京都立大教授の阿部彩さんに、この間変わったこと、変わっていないことについて聞きました。
物足りない貧困対策
この10年で、子どもの貧困対策より、少子化対策が進んだと言えます。踏み込んで言うと、政府がやっているのは、少子化対策です。
例えば、保育料の無償化。もちろん子育て世帯は助かります。学校給食の無償化も広がっています。ギリギリ無料にならない層は負担が減りますが、困窮家庭はもともと無料ですので、これらの無償化の恩恵は中間層や高所得層が受けます。
今議論になっている児童手当の所得制限撤廃も、同様でしょう。厳しいひとり親への児童扶養手当の増額やふたり親世帯も含めた適用拡大、という方向性ではありません。
この間、子どもの貧困対策として際立っているのは、給付型奨学金や授業料免除の制度新設。困窮世帯の子どもの大学などへの進学が可能となりました。また、授業料実質無料が私立高校にも拡充されました。公立に入れない困窮世帯の子どもには朗報です。
ただ、貧困対策としては物足りない。子どもの貧困は親の貧困ですから、貧困そのものを防ぐ必要があります。本丸は、働いても貧しさから抜け出せない「ワーキングプア」問題であって、根底は労働問題なのです。
賃金を上げよ
日本の子どもが、いかに低い…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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