村上友里
親権を持つ男性から2人の子どもを連れて別居したのは違法だとして、東京地裁(市川多美子裁判長)は25日、男性の元妻と元妻に助言した2人の代理人弁護士に110万円の損害賠償を命じた。「子どもを守るために必要だった」とする元妻側の主張を退けた。
判決によると、原告である名古屋市の男性と男性の元妻は2015年、長男(17)と次男(11)の親権者は男性と決めて協議離婚をした。男性と元妻はその後、子どもとともに再び名古屋市内で同居したが、元妻は16年に子どもを連れて別居した。弁護士は元妻に対し、連れ出すことに肯定的な助言をした。
元妻側、精神的虐待があったと主張
これに対し男性は、精神的苦痛を負ったとして元妻や弁護士らに1100万円の損害賠償を求めて訴訟を起こした。
元妻側は裁判で、子どもを連れ出した理由について、男性による自分自身への精神的な虐待があったことに加えて、子どもにも虐待が及ぶ可能性があったと説明。離婚後も復縁を予定した内縁状態だったことをふまえ、「離婚前の共同親権の状態と同じで不法行為にあたらない」と主張していた。
しかし判決は、男性を親権者と定めた離婚を「有効」と判断し、元妻が子どもを連れ出した時点の子どもの親権は、男性にあったと認めた。そのうえで、親権のない元妻の行動について「子どもと不法に引き離されることがないという親権者の利益を侵害した。男性のもとに子どもを残すことが子どもの幸福に反するとは認められない」と結論付けた。
「弁護士がアドバイスしづらくなる」
さらに判決は、元妻の代理人弁護士2人が子どもの連れ出しを肯定したのは人身保護に関する過去の判決にそぐわず、「独自の見解に基づく違法な実力行使を(元妻に)助言した」として賠償責任を認定した。子どもの親権をめぐって代理人弁護士の賠償責任を認めたのは異例だ。
判決で賠償を命じられた弁護士は取材に、「子どもが虐待の被害を受ける可能性がある場合、親権の有無にかかわらず子どもを連れて逃げたほうがいいというアドバイスを弁護士がしづらくなる。弁護活動の萎縮につながらないかが心配だ」と語った。(村上友里)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル