憲法学者で2児の父の木村草太さんは、第1子が生後数カ月のころ、妻の一言にはっとしたといいます。自身の経験を振り返りながら、子育て世代へのメッセージを語ってもらいました。
第1子が生まれて3カ月になるかならないかの頃のことです。近所を散歩中に、妻に「女の人が初めて離婚を考えるのって、第1子が生まれてすぐなんだって」と言われました。
子育ての大変さを初めて自覚した私は、「できることは全部やる」を基本に、保育園の送り迎えや食事の準備もするようになりました。
ただ、育児に時間を割いているとはいえ、「妻の深さには及ばない」と思う場面は少なくありません。
例えば、子どもが転んでけがをすることが続いた時。私は「またやった」としか考えていないのに、妻は難病の可能性まで心配していました。
第2子が生まれた時から小さめだったことにも、妻は母子手帳の成長曲線を眺めては悩んでいました。そんなとき妻は、非科学的であることは重々承知しつつ、妊娠中の食生活までさかのぼって自分を責めていたのです。
それを無駄な悩みだと流さずに、悩んでしまうという事実に向き合ったことで、育児のパートナーとしての信頼関係を育めたと思います。
悩みって、まず自分が具体的に何に悩んでいるか、知ることが難しい。人に相談できた段階で、悩みは半分ぐらいにはなっているのではないでしょうか。
親たちからだけでなく、子どもからの相談も受ける機会があればと思います。いま、いわゆる「ブラック校則」の研究をしていますが、日本では子どもの意見を聞くことが日常的にないがしろにされていると感じます。
大人も子どもも、悩みを発信してくださること自体がひとつの表現で、社会への贈与だと思います。
自分と同じ悩み方をしている人がいるとわかるだけでも、救われる子どもや親がたくさんいる。もちろん、法や制度で解決できるかもしれない悩みについては、広く社会につなげて訴えていきたいです。
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きむら・そうた 1980年、神奈川県生まれ。東京都立大教授(憲法学)。2児の父。著書に「自衛隊と憲法」「子どもの人権をまもるために」(編著)など
「ウチのお悩み相談室」始めます 木村さんらが回答
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル