巣箱のシジュウカラのひなにえさを届けるのは、まったく別種のスズメ――。そんな珍しい光景が8月、東京都杉並区の住宅の庭先で見られた。
JR阿佐ケ谷駅に近い住宅街。田村純利(すみとし)さん(75)は十年以上前から自宅の庭に巣箱を据えている。改良を重ね、シジュウカラが巣を作るようになったのは2年ほど前から。今年は7月中旬に卵を産んだようだ。「コロナ禍の外出自粛で自宅にいることが多く、こんなにじっくり観察したのは初めてでした」
8月に入ると、親鳥がえさを運んでくるようになった。その頃から巣箱にスズメが近づくことも増えた。えさを横取りに来ているのかと思い、ホースの水で追い払っていた。ところが、よくよく観察を続けていると、ひなにえさを届けているのがわかって驚いた。
えさやりに励むスズメは2羽。親鳥が近づくと威嚇して取っ組み合いになり、スズメどうしも鉢合わせるとけんかに。「どちらも『自分こそ親鳥』と主張しているようでした」
田村さんの話を耳にして8月24日に訪ねた知人の前坂靖弘さん(80)には、親鳥の方が遠慮がちで、むしろスズメの方が強そうに見えた。前坂さんは野鳥撮影歴14年。「スズメもシジュウカラもあまりにも身近にいる鳥なので、普段はほとんど撮らないけれど、こんな光景は見たことがない」。庭先に三脚を据えると、望遠レンズで約3時間撮り続けた。
日本野鳥の会の上田恵介会長によると、別種のひなにえさやりする事例は珍しく、さまざまな鳥の組み合わせで時折報告がある。本能的な行動とみられ、ひなを失った親鳥が「子育て衝動」のようにえさやりに乗り出すこともあるという。
騒動の中、4羽のひなはすでに…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル